凡脚週末ローディの戯言

購入した自転車用品や参加したサイクルイベント・ブルベの雑感などを凡脚・非レース勢としての視点からつらつらと

炎上しない程度に頑張ります

カテゴリ: PBP2023

前回の記事はこちら↓
PBP2023レポート⑧ : 凡脚週末ローディの戯言 (livedoor.blog)

【ゴール後

  ゴールゲートを潜り感傷に浸…っている間もなく、即座に完走者用の駐輪場に追いやられる。…まぁ、いつまでもボーっとされてても邪魔だし危ないだろうし仕方ないね。ということで自転車を停め最後の押印の儀式を執り行う。場所は物販コーナーのテントの中である。スタンプを押してもらい完走メダルとミールチケットと共に、その場でブルベカードも返却される。…え?良いの?これオペレーションミスってない?と心配になるも、周りの人たちもやはりその場でブルベカードが返却されていたので、そういう運用らしいと納得する。ICタグで管理されているから、それで良いということなのだろう。
 とりあえずテントから出て知り合いがいないかと思いボーっとしていたが、さすがコミュ障ぼっち系サイクリストのワイ、そんな都合よく顔見知りなんて現れないぜ!勿論ジャージ交換なんて求められることもないぜ!…ということで近くにいた優しそうなお姉さんに普段はやらないゴール完走報告用の自撮り写真の撮影をお願いし、昼食を食べるために行列に並ぶ。うーん、長い。空模様を見るとだいぶどんよりしており、いつ一雨きてもおかしくなさそうである。そうしていると同じくゴールしていた15さんとはまいぬさんがやってきてしばし談笑しつつ、ドロップバッグ回収ならびに洗濯峠についてのスケジュールを打合せする(ゲンナリ)。いったん彼らとはここで別れ、しばし待っているうちにテントの中に入れたので昼食と相成った。最後に食べたPC飯もそうだったがやはり美味しくいただくことができた。五臓六腑に染みるぜ…。おまけにデザートがパリブレストという粋な計らいもあり、『フランスでパリブレストを食べる』という実績を最後の最後に解除できたのは素直に嬉しいところである。
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 満腹になったところで一息ついていると、いつの間にか激しい雨音が。うーん、これは流石にお外には出れませんね…。というか、あと数時間ゴールが遅れていたらこの雨の中走る羽目になっていたのか。幸い、テントの中は特に混んでいるというわけではなく、雨雲レーダーを確認してもすぐに止みそうな予報であったため雨宿りがてらTwitterを巡回する。DNF・完走報告が入り乱れる悲喜こもごもなTLを眺めているうちに雨も止んだため、トイレだけ済ませてホテルに戻る。駐輪場から自転車を出す時は盗難対策なのであろうか、リストバンドをしっかりチェックされるという中々のセキュリティの高さであった。
 ランブイエ駅まで戻るとPBP参加者達でごった返しており、切符を買うのにも一苦労しそうな様相である。ここでもまたばるさんとさめはるさん夫婦に出会ったので話を聞くと
マジでよく会うな()、どうやらまたホワイトハウスでハンバーガーを食べていたらしいwまぁ、でもあそこ美味しいからね、仕方ないね。思えば、自分がしっかり完走できたのは彼の情報や助言によるところが非常に大きい。本当にお世話になりっぱなしで頭が上がらないものである。
 とりあえず切符販売機まで来たので買おうとしたが、極限まで低下したIQも相まって買い方がよくわからない…。あーでもないこーでもないとまごついていると、日本からの参加者でこれまた同じくラレー乗りの方に助けていただけた。感謝を述べつつ何でもこれまた同じく下車駅もヴェリエールということで、雑談しながら一緒に電車に乗って帰ることに。…車内で爆睡してしまい、この方がいなかったら確実にモンパルナスまで乗り過ごす羽目になっていたことを、ここで懺悔いたします。
 ヴェリエールに到着したので先ほどの方とはここで別れ、スーパーで買い物を済ませて宿に戻る。オーナーに「レースお疲れ!何着だったの?」と聞かれたので「レースじゃないけど、何とか時間内にゴールできたよ」と
ゴミみたいな英語力で答えておく。Tessyさん含め、まだ誰も戻ってきていないようだが、状況を聞くと「時間ギリギリでゴールしたので、宿には戻らずそのままドロップバッグの回収に向かう」とのこと。無事に認定完走できていたようで本当に良かった。
 さて、ドロップバッグの回収時間は17:00~18:00のわずか一時間。とりあえずシャワーを浴びてある程度の人権を回復させたらちょうどいい時間になったため、バッグの回収に向かう。お尻が完全に崩壊していたのでダンシングのみで回収場所に向かい、15さんとはまいぬさんと合流してそのままコインランドリーまで向かう。気分的には洗濯はもう帰国後に回したいところだったが、かいた汗の量を考えると流石にそれはマズかろう…という苦渋の決断であった。洗濯機を回しながら近場のガソリンスタンドでジュースやお菓子を買い込み(私は1ℓのOASISを購入した。一瞬で飲み切った)、近くのベンチで座りながら今年のPBPはどうだったこうだったと話に華を咲かせる。「今年のPBPは気温やBRESTからの復路、シークレットPCの配置等で例年とは傾向が違っていた」という会話などはまさに、センター試験共通テスト直後の受験生そのものだな…と考えると少しおかしかった。
中~高生くらいの男子がおそらくフランス語で「そのジュースちょうだいよ」みたいなことを言ってきたので無視していたら、最終的に威嚇されてどっか行っちゃった。
 洗濯も終わったのでまた例のインド屋に向かうと、先客にクロさんが。折角なのでご一緒にチーズナンセットとビリヤニをキメ会いたかったよチーズナン、フランスでの最後の晩餐と洒落込む。一通り食べ終わり名残惜しいが宿に戻る事とする。そう、今日のタスクはまだまだ残っているのだ…。

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 クロさん・15さん・はまいぬさんと別れを告げ宿に戻る。あれ?もう結構良い時間なのに私以外まだ誰も帰ってきてないな?と思いきや他の方々もそれぞれの友人たちと祝勝会をしているとのこと。私と同室の方からは「今日はもう戻らないのでお部屋は占有して好きに使っちゃってくださいw」と連絡が。折角なのでお言葉に甘えて遠慮なく広々と使わせてもらおう…。さて、1200km以上も走ってきた上に連日寝不足である。時刻は20:00。いい加減オフトゥンにダイブしたいがそうは問屋が卸さない。そう、私の帰国のフライトは明日8/25のPM12:00発の便である。CDGまでAM9:30までには到着していたい…ということでタクシー(Uber)の予約時間はAM8:00。これが何を意味するかと言うと今すぐ自転車も含めて帰宅の準備を完了させなければならないということである。つらい。非常につらいが仕方がない。過去の自分を呪いつつアマプラで出国前にDLしてきた映画を流しつつ作業を進めることにする。1時間くらいかけて何とか日没までにパッキングを完了させ(陽が落ちるのが遅くて助かった)、ようやく寝ることができる…。余裕があるなら帰国は最低でも翌日の夕方以降の便を抑えることを強く推奨しておく。

【帰国
 
AM6:20…祭りも終わり、今日はいよいよ帰国である。シャワーを浴びて朝ごはんにアルファ米のわかめご飯を食べ(せっかくだから昨日寄ったスーパーで総菜パン買えばよかった…)、出立の準備を済ませる。さて、往路と同様にCDG→SIN→KIXの長丁場のフライトとなる。忘れ物が無い事も確認し、ちょうど予約していたUberがくる時刻となったため、宿を後にする。…長い間!!!くそお世話になりました!!!

こない。

 おいおい一体どうなってんだ道でも混んでるのかアッハッハ!んもぅフランス人ったら時間にルーズなんだから…とりあえずドライバーは今どこにいるのかな?と思いUberアプリを開いて確認したところ、「この予約はキャンセルされました」との文言が。これは一体どういうことだと思い調べてみると、どうやら行きの配車で支払いに使おうとしたクレジットカード(私が滞在中に使用していたものとはまた別のカード)
不正利用を疑われてロックされてしまっていたことでその分の支払いができていない状態であった。じゃあ私が持ってきていたカードを使って再度配車しなおすべ…と処理を進めても、Uber側からも悪質なアカウントだと判定されてしまっており、予約を受け付けない状態であった。
 マズいな…今から鉄道使って移動しても間に合うか?…いや、調べたところ厳しいな。これはいよいよ万事休すか?と途方に暮れていたところ、同じ宿に泊まっていたTessyさんのご友人がたまたま通りがかり、事情を説明すると「じゃあ私が配車しますよ。お金はまた後で銀行口座に振り込んでおいてください」とありがたいお申し出が。時刻はAM9:00でさすがにもう余裕が無いためお言葉に甘え呼んでいただくことに。幸いすぐにドライバーとのマッチングに成功し、すぐに来るということで慌てて乗車した。この騒動で起こしてしまったTessyさんにも最後の挨拶とお見送りをしていただき、慌ただしくCDGに向かった。その節は本当にありがとうございました。
 CDGにAM10:00到着。道も混んでおらず1時間で済んだのは本当に助かった。ここまで運んでくれたドライバーにお礼を言いつつ(これがフランス滞在中最後のメルシーだ)、道中の車内でオンラインチェックインを済ませていたためそのままシンガポール航空の受付へ行き自転車を預ける。そのまま慌ただしく手荷物検査や出国審査を終え(KIXより遥かに厳格だった。SPDシューズのクリートもバッチリ金属探知に引っ掛かってしまったし、手荷物の中身もチェックされた。ライトやモバブ類の容量確認やオイルのSDSは相変わらず求められなかったが…)、お土産も購入し綺麗に€も使い切り、本当のギリギリになんとか飛行機に乗り込むことができた。ありがとうなフランス。楽しかったよ。次来るときはゆっくり落ち着いてパリやモンサンミッシェルでも観光するよ。PBPの私設エイドなんかも楽しそうではある。
 
ラッキーなことに、CDG→SINの13時間のフライトでは隣りが空席の通路側を確保することができた。やはりエコノミークラスと言えども、もうこれだけで快適度は雲泥の差。気温は何故か終始寒かったが、個人的には耐えられないというほどではない。むしろ肌寒いくらいの方が汗もかかずに快適なまである。PBP出走直後ということでお尻へのダメージも心配だったが、むしろ逆に幸せの閾値が極限まで低下している状態のため往路と違い「わぁ、ただ座ってるだけで目的地に着くなんて、なんて素晴らしい文明の利器なんだ!」と一切のストレスを感じなかったこと奴隷輸送船とか言ってごめんなさい、何より疲れ果てていたため4時間くらいしか覚醒していなかったため、全くストレスは感じなかった。
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 そうしていつの間にかチャンギ空港に到着。まだまだ日本までは耐機時間の7時間も含めてまだ遠いが、アジアということでもう気持ちとしてはだいぶ帰ってきてしまった感が強い。ひとまず朝食として2000円以上する一風堂のラーメンを食べ(マジで高いなと思ったが、それ以上にこの時の私は「ジャパニーズヌードルのためなら殺人すら厭わない」という心境であった)、あいにく外はこれまた雨であったため、空港の中を観光して時間を潰すことにした。さすがアジア最大のハブ空港、ただ見て回るだけで余裕で時間が潰せるぜ。しかし、知ってはいたが物価の高さ半端無いな。セブンイレブンでペットボトルのコーヒーが300円くらいするんですけど…。
 
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 さて、見るものも無くなり他の人のPBP珍道中を拝見していたら、いよいよKIXまでの便の搭乗手続きが開始となる。チャンギ空港の場合、各ゲート毎に手荷物検査+出国審査があるので少し面倒である。どうでも良いが、出国審査の際にパスポート写真と私の顔写真を照会するゲートがあるのだが、精度が低いのか私含めてそこで3~4回やり直す羽目になった人が何人もいた。国際線に乗る時はやはり時間に余裕を持って行動した方が良さそうだ。
 ゲート先でトイレも済ませ(まさかのウォッシュレット完備であった)、今回の旅の最後のフライトとなる。機内は寒すぎず暑すぎずな環境で特筆することもなく6時間後に関西空港へ到着。ロストバゲージも無く何とか無事に旅を終えることができた。くぅ~疲れましたw
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【その後
 体調の方はというと、実は左手の指先の痺れがかなり強く残っており、この記事を執筆している1ヶ月以上経過した今でも容態としては改善されておらず、自転車にも全く乗れていない日々が続いている。整形外科に通院し投薬治療中ではあるが、このまま一向に改善されない状態が続くと手術の可能性を示唆されている。利き手ではないため幸いにもギリギリ日常生活に支障はきたしていないが…何か対策はあるのだろうか?痺れが出ている箇所から判断するに、掌の尺骨神経ではなく首筋に通っている神経への圧迫の可能性が高いとのことなのだが…。これもうリカンベントデビューしか無くない?
 それも踏まえた上での総論としては、本当に参加して良かった。この一言に尽きる。金銭面でもスケジュール面でも参加するハードルは非常に高いが、それでもなお全てのサイクリストに是非とも参加してもらいたい。心の底からそう思えるイベントであった。
 同じ最高峰でもツール・ドフランスに参加できるのはごく一握りの選ばれた人間だけだが、パリ・ブレスト・パリであればほぼ全てのサイクリストに門戸が開かれている。そこにいる人間全てが主人公。人生で一度くらい、思わず出会う人みんなに話したくなる壮大なドラマの舞台に上がってみても良いじゃないか。自分の人生や価値観が変わったとは思わないし言うつもりもないが、楽しかったと断言できる。これは間違いなく自分にとって大切な、かけがえのないものである。

 最後に自転車を通じて出会った友人達、参加にあたり支援してくださった方々、国内の主催団体スタッフのみなさん、現地のスタッフならびにボランティアのみなさん、その全てに感謝を。

本当にありがとうございました。


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前回の記事はこちら↓

http://gutti0822.livedoor.blog/archives/21668609.html

PC12:Mortagne-au-Perche~PC13:Dreux
 むくり。寝過ごすことなくきっかり1時間後のAM3:40に起床する。明らかに健康で文化的な最低限度の生活を送れてるとは言い難い睡眠時間だが、ここは日本国憲法が適用されない異国のフランスである。しかたがない。もういい加減身体が受け付けなくなってしまったスローバーと羊羹とカルパスを吐き気を堪えながら無理矢理水で胃に流し込み、歯磨きと洗顔を済ませAM4:15にスタートを切る。残り約120km…いよいよ最後の朝である。
 もうすっかり見慣れた感のあるランタン・ルージュの一部となりながら闇夜の中を走っていく。相変わらずこの時間でも気温も湿度も高いが、一桁気温よりはマシだろう。というかいい加減尻と左手が痛いな…と考えながら一時間くらい走っていると、頭に靄がかかったように思考が鈍り出し始めてきた。これまでのキャノボ(東京大阪キャノンボール。大阪梅田~東京日本橋を24時間以内で走破するチャレンジのこと)やブルベの経験上、これは眠気ではなく低血糖による意識混濁だとすぐにわかったのでその場で脚を止め、補給食をやはり水で流し込むように無理矢理摂取する。もうスローバーは食べたくないお…。そしてそのまま数分間ほどボーっとしていると意識がクリアになったことがハッキリと分かったため、再びランブイエに向けて
数多くのゾンビと化した集団をパスしながら走り出す。すると10分もしないうちに私設エイドがあったため、ダメ押しとばかりにお菓子とコーヒーをいただく。朝の5時台という早朝にも関わらず本当にありがたい…。暖かいコーヒーが五臓六腑に染みるぜ…。ここで糖分とカフェインを十分に摂取することができたおかげで、無事に最後まで走り切ることができそうだ。
 そしてPBP中最後の夜明けを迎える。この時見た朝焼けは、きっと生涯忘れることはないだろう。
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 そして気付けばもうすっかりアップダウンは殆ど無くなっており、平坦路がメインの道のりとなっている。いよいよ終わりも近いな…と考えていたあたりでAM7:50、最終PCのDreuxに到着した。
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 クローズ時刻まで1時間40分も残しており、この先の残り43kmも平坦路。よほどクリティカルな事態に陥らない限りは認定完走は確実だろう…ということで、最後だし記念にPCのレストラン飯を食べてみることにした。
 レストランの行列に向かうとbaruさん・さめはるさん夫妻も並んでおり
よく会いますね、食事もご一緒させていただくことに。ラザニアとポテトベースの何だかよくわからない料理と謎スープ、メロンとオレンジジュースをトレイに乗せて会計に向かう。どうせ最後だしということで値札を見ずにレジへ直行というげんしけんの班目ムーブをしたものの、合計で16€…た、高い!高いがまぁ、ボリュームはかなりあった上に噂に聞いていたような味がマズいどころか、むしろかなり美味しかったのでヨシ!とする(後で知ったのだが、ここDreuxのレストランは全体を通して屈指の美味しさらしい。最後の最後で運がよかった)。
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 そしてこの時、baruさんの口からMortagne-au-Percheのシャワー脱衣室で、はまいぬ氏が盗難被害に遭っていたことを知る。そんな最終局面で他の参加者の足を引っ張る輩がいることに呆れると同時に、一歩間違えていたら自分が盗難被害に遭っていた可能性も十分にあったことに戦慄した。しかし考えてもみれば、確かにPCのシャワールームにおいて防犯セキュリティという概念は絶無である(過去には仮眠所での就寝中にパスポートも含めて全財産持って行かれたという人も…)。受付スタッフに頼んで貴重品だけでも預かっててもらうか、それが不可能であればチャック付のジップロックや衣類圧縮袋に入れた上でシャワーを一緒に浴びるかくらいしか、確実に盗難を防ぐ術は無いように思える…。
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本人転載許可済

 幸いにもパスポートや現金・クレジットカードの類は無事だったため走行自体は継続できているとのことだったので、とりあえずその点については安堵しつつ、AM8:30にゴールのRambouilletに向けて走り出した。

PC13:Dreux~GOAL:Rambouillet
  貯金は一時間、要求されるグロス平均速度は約9km/h、左の痛みは強まっているがレバー操作ができないほどには至っていない。40分間も休息していたためサドルに尻を乗せると激痛が走るが、それも5kmほど我慢して乗っていればすぐに消える。この区間は平坦路ということもあり懸念事項はもはや何も無い。淡々とペダルを回しゴールに向かっていく。
 
Rambouilletまで残り15km、道中に残り距離を示す看板が目に入った。いよいよこの旅も終わる。途端、様々な思い出や感情が胸に去来した。18年と4ヶ月前の春、「何となく楽そうだから」で入部した大学のサイクリング部。初めて購入したスポーツ自転車であるランドナー。仲間たちと沢山泣いて、沢山怒って、そして沢山笑ったあの日々。ポタリングやツーリング先で見た景色。青春18切符で本州のど真ん中から北海道へ行くのは大変だったな。毎週のように徹夜で朝まで誰かの自転車をメンテナンスしていたことも昨日のように思い出せる。「GUTTIさんって結局、グリス塗れの四年間でしたねw」とか言われたこと、今でも忘れてないからな…。あ、そうだ。卒業式の日や最後に静岡の家を引き払った時、駅まで後輩たちが見送ってきてくれた時は柄にもなく泣いたっけ。本当にあっという間の、まるでおとぎ話みたいな4年間だったな。
 残り10km。結局、サイクリング部を卒業してもずっと自転車に乗り続けている。社会人一年目の研修期間中に住んでいた岐阜県で下呂温泉や白川郷に一人で走りに行ったりして。縁も所縁も知り合いもいない九州に配属になった後も、三連休になるたびにフラフラあちこち走りに行って。糸島や虹ノ松原や九重方面もまた走ってみたいな。異動してきた自転車趣味の先輩と阿蘇周辺を走った時は流石にヘトヘトになったっけ。その翌週に「やっぱ軽い自転車が欲しい!」とか言ってカーボンロード買った気がする。学生時代に走った九州でのツーリングルートをトレースしたりもしたな。
 残り5km。東京に引っ越してからだったっけ。キャノボやブルベという存在を知ってそのあまりの世界観に驚嘆し、凄い人達がいるもんだと思ったりして。そしてそんな人達に憧れて、自分も参加するようになったのは。そこでもやっぱり色んな人達と出会い、色んな景色を見てきたな。まぁ、基本はしんどい思いばっかりしてたけど。キャノボなんて何なんだよあれ。何であんなしんどい事を3回も4回もやったんだろ…けど、楽しかったな。本当に楽しかったな。そしていつしかPBPも走ってみたいなとは漠然と思ってはいたものの、まさか本当にそんな日が来るとは思ってもみなかったなぁ。
 学校のマラソン大会でビリっけつでゴールした自分に「お前は20年後、自転車でフランスを1200km走ることになるぞ」と言ったらどんな顔するのかな?まぁ、信じないか。今でも正直夢じゃないかと思ってるし。
 歓声が聞こえる。アレがゴールゲートか。いよいよあの18年前、自転車と出会った日から続いた"旅"が終わる。自分がこんな形で『主役』になる日がくるなんて、自転車に乗ってなかったらきっと一生なかっただろうな。あぁ、もう良いか。こんな時くらいまた年甲斐もなく涙を流しても。今まで自転車で出会うことができた人達と過ごしてきた日々、丸ごと全部愛してるぜ!!


 
PBP2023:認定完走でゴール
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じかーい、じかい(ラストです)↓
PBP2023レポート⑨ : 凡脚週末ローディの戯言 (livedoor.blog)

前回の記事はこちら↓
http://gutti0822.livedoor.blog/archives/21641032.html

PC8:LOUDEAC~WP5:Quedillac~PC9:TINTENIAC

 「イッツタ~イム」
 

 眼前にお年を召されたご婦人の顔が広がっていた。なるほど、これがLOUDEAC名物ブルターニュおばちゃんのASMRか。時刻はAM4:00ちょうど、申告していた希望時刻きっかりである。いや~、なんてサービス精神旺盛なんだ、おかげで快適な目覚めだぜ。おはようございます。
 気温は15℃程度で少し足元は冷えている感覚があり少し肌寒くはあったが、やはり思った通り眠れないほど致命的な冷え込みとはならなかったのは僥倖である。
 よし、まずは歯を磨いてから朝ごはんがてら補給食を食べる、いつものルーチンに入るか…ということでナップザックの中を漁ると歯ブラシが見つからない。恐らく昨夜シャワールームに忘れたな…と思い、スタッフに忘れ物として届いてないか確認するも無いとのこと。シャワールームにお邪魔させてもらうもやはり発見できず。うーん、これ捨てられちゃいましたね…。仕方ない。道中のスーパーで調達するしかないか…と早々に見切りをつけ、人権を失った口に補給食を突っ込みながら準備を終える。ライトを充電が完了しているものに取り換え、ドロップバッグに不要なものをぶち込み再出発を図る。時刻は少し予定を押して4:40…ちょっと巻きのペースでいく必要はあるし口の中が気持ち悪くていきなりテンションが下がっているがまぁ、なんとかなるべ。
 口の中の雑菌による不快感と目の前を塞ぐゾンビ走行集団と戦いながら(フラフラな状態で反対車線走るのは勘弁してくれ。っていうかDNFしてくれ…)、下り成分多めのアップダウンを越えていく。しっかり眠れたおかげで脚は調子よく回る。やはりLOUDEACで仮眠を入れて正解だった。左手も痺れと痛みは感じるがしっかり動く。特にレバー操作に支障は無さそうだ。というわけでグロス21km/h程を維持しながらまずはWP5のQuedillacに到着。念のためシークレットPCではないかを確認…うん、大丈夫だ。というわけで立ち寄らずにそのままTINTENIACに向かう。どうせ25kmと近いし特に尿意も無い。補給食も十分過ぎる量だ。
 そうしてTINTENIACに向けて走っていると、後ろから来た西洋人から割と流暢な日本語で「あなた日本人ですか?」と声を掛けられる。「Yes,I am Japanese!」と返そうかとも一瞬考えたが、ここは敬意を表し日本語で「そうです。日本語お上手ですね」と返答する。なんでもイタリアトルコだったから来られた方で、日本文化が好きで日本語を学んでいるらしい。「私、新幹線。あなたは?」と物凄いイキリ脚に自信があるようなことを言ってきたので、「Unfortunately,I'm a local train!」とニューホライズンに例文として載ってそうなセリフで答えて先に行かせることにする(発音が壊滅的なので、どこまで伝わったかは不明だが)。楽しかったぜ、Bullet train man…お互い無事にランブイエまで辿り着こうな!
 約20分後、先ほどの新幹線マンを追い抜いた辺りで霧が出てきた。何とも幻想的で実にヨーロッパらしい光景である。日ももうすぐ上がる時間帯であるが、これならライトはしばらく点けっぱなしの方が良いだろう。それにしてもいい加減歯を磨きたいぜ…と思った頃にPC9のTINTENIACに到着した。時刻は8:05。わーい、40分も貯金ができたよ!ということでまずはブルベカードに押印してもらいに行く。ついでにトイレで軽量化も済ませるか…と思ったが、便座の無いタイプしかなかったので一旦保留。
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イライラのあまりブリにやつあたり
そしていよいよ口の中の不快感が限界突破しつつあったので、近くに開いているお店が無いかグーグル先生に調べてもらうと…PCを出た直度にスーパーUがあり、もう既に開いていることを確認。じゃあもうジュース買ったりなんだりといった休憩はこっちで取るべということで、すぐに移動を開始する。余談だが、この時駐輪場で落としたブリを拾ってもらった際、思わず「Sorry」と言ってしまったら「おいおい日本人、こういう時は"Sorry"じゃないだろ?(ウィンク)」という、テンプレのようなやり取りが発生した(「Thank you!」と言い直しておいた)。
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 まだ開店直後のためか、客は私以外に数人しかいない。とりあえずまずは軽量化だとお尻セレブを背中のポケットに入れてトイレに向かったのであるが、えぇ…何でここも便座が無いの…?(困惑)いや、確かに綺麗ではあるんだけど…。まぁ、でも仕方がない。ここで便座無しの洋式トイレを経験することで、新たな見識を得られるかもしれない。男は度胸!何でもためしてみるのさ。
 自分の中での『絶対に使いたくないトイレランキング』のワースト1位が和式から便座無し洋式に更新された後(780km走ってからの空気椅子は拷問である)、旅行用の歯ブラシセット(分割式でめっちゃ便利そうだったので、予備も含めて2セット)とオランジーナを購入する。これにてようやく口内の人権を回復することに成功。60km先の次のPCであるFOUGERESの街を目指す。
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PC9:TINTENIAC~PC10:FOUGERES
 えっちらおっちらとまた無限アップダウンのコースに戻る。う~ん、しかしいい加減このどこまでも続く未開拓の大草原は飽きてきましたね…。街に入ると西洋建築が珍しい文化圏の人間としては、テンションが上がるのだが…。とりあえず気分をアゲるためにまた、昨日に引き続きアニソンを垂れ流す限界オタクと化しながら走る事数時間、ちょうど尿意を催したところでゴヌの街の入る。ちょっと一息入れたくもあり、デカイ教会を眺めながらコーヒーを飲むというのもオツなものだろう…ということで『Le Central Bar』というお店に入る。

 店主「お、日本からの参加かい?ようこそフランスへ!」
  私「そうだよ、ありがとう!先にトイレ借りてもいいかい?」
 店主「もちろんだとも!」

というやりとりを英語で行い(思ったより英語ができるフランス人は多い印象)、ありがたく使わせていただく。

  私「トイレ貸してくれてありがとう!コーヒー一杯もらえますか?お値段はいくら?」
 店主「お金は結構。俺の奢りだ!残りも頑張ってくれ!」

 いやいや、悪いよ…と思ってむしろ支払いたいくらいであったが、私の語学力ではそれを伝える術は無いのでありがたく頂戴することに。外のテラス席に出てボーっと教会や街並みを眺めながら飲み終える。…マジで美味ぇな、このエスプレッソ。精一杯の感謝を「セ・デリシュー。メルシー」と言葉に乗せて店を後にする。みんな、ゴヌの街の
『Le Central Bar』をよろしくな!(ダイレクトマーケティング)
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 そうしてまたジリジリと気温が上がる中、1時間ほど走行しPC10のFOUGERESに12:35到着。ここでもいつも通りスタンプ・トイレ・給水の3点セットのタスクに加え、そろそろ日本食が恋しくなってきたため持参したアルファ米(赤飯)を食べる。水は15kmほど手前で入れてきていたため、あと10分ほどすればいい塩梅に出来上がっているだろう…。
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 トイレから戻り木陰で赤飯を食べていると、駐輪場の方でガッシャーンと派手な音がした。なんだなんだとそちら見やると、自転車をドミノ倒しにしてしまった人が他の参加者から何やら怒鳴られていた。これだけ参加者が多ければ起こっても仕方がない事故ではあるが、自分も気を付けよう。

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次のPCは90km先である。もはやすっかりお馴染みとなった灼熱地獄の中を走り続け、途中で暑さに辛抱堪らなくなりまた芝生の上で20分ほどゴロンと昼寝をしたりして(5人くらいの参加者が昼寝していたスポットだったので、流石に事故と間違われることはないだろうと判断した)、着実に距離を削っていく。…明らかに私有地というか、他人の家の庭で昼寝している人達の姿が目につくんだけど、家主に許可は取っているのだろうか?まぁ、取っているんだろう。そうじゃなかったら流石にいくら何でも非常識過ぎるし。
 この辺りになるとハイタッチを求められたり声援をくださる方の数がかなり増えてきた印象を受ける(笑顔でメルシーメルシーと返すことに努める。カッコ悪いところは見せられない)。1001km地点を示す看板を見てようやく終盤戦に至ったことを実感。しかし身体にも異変が起こり始め、ここまでずっと食べ続けてきた補給食(スローバー・羊羹・カルパス)をとうとう受け付けなくなってしまった。固形物が食べられない…とかではなく、こいつらを食べる事を想像するだけで気持ち悪くなるというものである。おかげで私設エイドには本当に助けられた。あの局面で食べたバナナやメロンといった果物や、ポテチ、カヌレといったお菓子の美味しさは生涯忘れることは無いだろう…。暑さもあり出力も思ったより上げられず、予定より1時間遅れの18:40に
VILLAINES-LA-JUHELに到着。ここまで来れば残り200km(=1ブルベ)ということもあり、なかなか活気に満ち溢れた雰囲気となっている。往路でこのPCのシャワーと仮眠所のクオリティの高さは理解したためここで一泊することも少し考えたが、15さんから「Mortagne-au-Percheで仮眠するため、はまいぬ君と向かってます。そして絶賛パンク修理中。待ってるね💗」という業務連絡が入る。まぁ、脚にはまだ余裕があるし、それじゃあ今日は予定通り80km先のMortagne-au-Percheまで進むことにするか…。駐輪場でたまたま隣に停めていた方が日本からの参加者で、「ここまできたらもうあと少し。事故でDNFというのもつまらないのでお互い気を付けて完走しましょう」と話しているうちに準備が完了。今夜の仮眠時間を少しでも稼ぐために出立した。
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PC11:VILLAINES-LA-JUHEL~PC12:Mortagne-au-Perche
 PCから出た直後、応援してくれる人の姿もかなり多く随分と励みになる。今日はまだ長丁場だし相変わらず灼熱だが、なんとか頑張ろう…と思った直後、参加者の事故現場を目撃する。幸い落車した本人は意識ははっきりしてそうではあったものの、救急車に運ばれているところを見ると先ほど交わした会話を思い出し、改めて気を引き締める。
 そして8kmほど走った丘の上で、ふとある違和感が脳裏を掠める。あれ?そういえばブリの下に括り付けていた反射ベスト、さっきPC出た時目にしたっけ?とりあえず自転車を停めサドルバッグを確認すると…やはり嫌な予感というか違和感は当たっており、無い。おそらくさっきのPCで落としたか…ここでいったん次のPCに行くか戻るか考える。現在時刻は19:30。日没までの1時間30分以内で72km先の
Mortagne-au-Percheに到着するのは流石に無理。反射ベスト着用義務違反によるタイムペナルティは2時間。今からVILLAINES-LA-JUHELに戻ってもまぁ、流石に2時間ものロスにはならないだろう。というか、フランスの法律では夜間の反射ベスト未着用は普通に犯罪である。…と、ここまで考えたところでedge530を一時停止させ、踵を返す。反対側から次々とやってくる参加者達や応援の方々に怪訝な目を向けられながら、VILLAINES-LA-JUHELに戻ってきた。すぐさまスタッフを捕まえ、スマホの画面に表示させた「ジレ(反射ベストのこと)を無くした。ここに忘れものとして届いていないか?届いていない場合、近くにジレを買える店は無いか?」という文章を見せた。すぐに英語ができるスタッフが来て下さり「忘れものに届いていないか確認してくる。もし届いてなくても何とかするから食堂で待っててくれ」とご対応いただけることに。
 待っている間は暇なのでTwitterを眺めていると、会社の都合で8/23中に帰りの飛行機に乗らざるを得なくなってしまい、70時間以内での完走必須というinfinite murachiさんが69時間30分で見事完走し、帰りの飛行機にも間に合った
(=5日あればPBPに参加できることを証明した)という報告を目にする。やりやがった!!マジかよあの野郎ッやりやがったッ!!
 流石にこのままボーっと待ってるのも難だし、せっかくなら補給しとくか…と思い直した。ということでチーズケーキとオランジーナを購入し席に戻ると同時に先ほどのスタッフも戻ってきたタイミングゥ…。「忘れ物として届いてはなかったけど、このXLサイズでよければ余ってるからあげるよ」と有難いお申し出が。もちろん他に選択肢も無いし、ありがたく承ることにする。「メルシー!メルシー!」と連呼するのと同時に「ありがとう。これで僕はまた…ちゃんと戦える」と心の中でキラ・ヤマトみたいなことを言い
(受け取ったのはフリーダムガンダムではなくXLサイズの反射ベストだが)、駐輪場に戻る。
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 先ほどUターンした位置まで戻りedgeの一時停止を解除。ここまでのロスはおおよそ1時間30分ほど。トホホ…まぁ、でも今晩の睡眠時間が削られてしまったのは確かだけど、2時間のタイムペナルティを喰らうよりはマシなのでヨシ!とする。ポリスに御用となって罰金取られる可能性もあるし。
 少しでも失った睡眠時間を取り戻すべく、そこそこに強度を上げて走ることにする。日も完全に落ちたしそろそろ涼しくなって…こない。いや、っていうか普通に蒸し暑いんですけどなんですかこれ?21時を過ぎてもサイコンの気温表示は28℃を示しており、路面状況を見るにどうやら通り雨が降ったらしく、湿度も体感で90…いや、間違いなく95%を越えている熱帯夜と化している。もうこれ完全に日本じゃん…と思いながらも闇夜の中を150Wくらいで頑張って踏んでいく。そしていい加減お尻が痛いぜ。
 次のPCまで残り30km、(そういえばさっき、15さん達がこの道中でパンクしたって言ってたな…。こんな真っ暗な何も無いところでパンク修理とかしたくないなぁ…)と思った直後、後輪からの突き上げが強くなっている気が。えぇ…こんなフラグ回収要らないよ…と思いつつ自転車を停めて確認すると、はいバッチリしてましたパンクです。何なんだよチクショウ…ということで即座にパンク修理の準備に入る。
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 ヘルメットに念のためと思って装着していた、自転車用のライトをヘッドライトにするためのアタッチメントにVOLT800を取り付ける。ここまでヘッドライトの出番も特に無く、別に要らなかったかなと思っていたのだが、まさかこんな形で役立つことになるとは…。刺さっているであろうタイヤの異物を確認するも、特に見当たらない。三周くらい確認するものの、やはり見つからず。うーん、これめんどくさいパターンか?と思ってチューブの穴の箇所を確認するとリム側に空いている。あー、これリム打ちパンクですね。そういえばここまで来る途中の街の下り坂で一度、後輪がちょっとした穴に嵌ったのかガツンと大きめの衝撃がきたな…クソ、あの時か。まぁ、であれば後はもうシンプルにチューブを交換すればそれで解決だから、それはそれでラッキーか。リムの方も特に振れは発生していない。空気は…PCでフロアポンプ借りれば良いから、とりあえず走れる程度に雑に入れとけば良いか。
 というわけで30分程度更に時間をロスし、パンク修理を終えて戦線に復帰する。これもう今晩寝れるんですかね…?と気が滅入りつつ走り出した僅か数km先の地点で、私設エイドが目に入る。こんな23時台と遅い時間でもやってくれることに心から感謝しつつ、小学校高学年くらいの子供にコーヒーを注いでもらって飲んでいると、フロアポンプが目に入る。「これ借りていい?」と親御さんに英語で聞いたら「もちろん!」と返ってきたのでありがたく使わせてもらうことに。フロアポンプの空気圧計を見ると4.5barしか入っていなかったので、6barまで入れて完全復旧。思ったより早いタイミングで万全の体制に戻れたことは本当にラッキーであった。
 そんなこんなで深夜1:10に
Mortagne-au-Percheへ到着。な、長かったここまで…。
 
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 ということでスタンプを押してもらい、消費したチューブを購買で補充して(『チューブ』『インナーチューブ』『タイヤチューブ』では全然通じなかった。フランス語では何て呼ぶんだろう?)計画段階で利用する予定の無かったシャワーの受付へ向かう。理由は初日同様である。スタッフから「水しか出ないけど良いか?」と聞かれたが、まぁ、この熱帯夜なら大丈夫じゃないかな、むしろ望むところだと思いながら頭からおもむろにシャワーを浴びちべたいッ!
いや、なにこれチラーでも使ってんのか?と聞きたくなるくらいの冷水が出てくるんですけど…。隣のアメリカ人もジーザス!とか言って爆笑し始めたんですけど…。
 歯を食いしばりながらさっさと全身を洗い終えて脱衣所で髭を剃っていると、AJジャージを着た人が入ってきたので少し会話をする。なんでもレーパンのパッド部分にジュースを溢してしまった結果、股ズレを起こしてしまいせめて衛生面だけでも改善させようとシャワーを浴び、PCで調達した新しいレーパンに履き替えるのだとのこと。それは想像するだけで辛い…無事に完走できることを祈る。
 そうして仮眠所の受付を済ませ中に案内してもらう。空調はしっかり聞いているが、寝床が薄手のウレタンマットが敷かれているだけの非常に簡素なもので、隣の人との間隔も数cmというものである。寝返りを打ったら大事故になるのではなかろうか…。幸い、これまた私が案内されたのは周りに利用者がいない区画ではあったのだが。
 時刻はAM2:30…ちょうど一時間後にアラームを設定しなら瞼を閉じる。計画ではここで3~4時間は寝る予定だったんだけどな、ちくしょう。

じかーい、じかい↓
http://gutti0822.livedoor.blog/archives/21748545.html

前回の記事はこちら↓
http://gutti0822.livedoor.blog/archives/21628815.html

WP3:Saint-Nicolas-du-Pelem~PC5:CARHIX-PLOUGUER
 2:55。寝ホンから鳴り響くスマホからのアラームで、スタッフに起こされるより先に目が覚める。ざっと4時間くらいは寝られたか。ふえぇ…どう考えても不健康な睡眠時間だよぉ…。ブルベは身体に悪いよぉ…。というわけで「おはようございます」なのか「こんばんわ」なのかよくわからない時間に再始動。
 昨日と同じくやはり歯を磨いて朝食がてらスローバーとカルパスと羊羹をキメていると、何やら日本語の会話が聞こえる。「いやぁ、実は自分G組(17:30スタート)でして…。マジでヤバいんですよね~。まぁ、でも大丈夫大丈夫!間に合う間に合う!w」…いや、流石にこの時間にここにいちゃマズいでしょう。全部のPCが例年通り実質通過チェック(足切りタイムの設定が無いPCのこと。前回までのPBPは途中のPCでタイムオーバーしていても、ゴールタイムが間に合っていたら認定完走!という運用だった)であらんことを…などと考えながら、準備を進める。気温は14℃…流石にちょっと肌寒いな。というわけで春秋用の少しだけ厚手のグローブとハーフシューズカバーを装着する。時刻は3:30…かくいう自分も実は余裕は無い。1時間48分で32kmを走らなければ足切りタイムに引っ掛かるのだ。というわけで出発します、カァ…。
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 自分もランタン・ルージュの一部と化しながら、街灯も何も無い大草原のアップダウンを駆け抜ける。ドン引きするくらい真っ暗闇なので前照灯は2本共点けていたが、特にテクニカルなコーナリングは一切無い直線路なので、逆にそれだけで昼間とほぼ変わらないペースで走ることができた。お尻への負担を減らすため登りはダンシングでダラダラ、下りは下ハンドルを握り一気に加速という走り方で距離を詰めていく(ちなみにこのような走り方をしているのはおしなべて日本人だけの印象だった。普段のブルベで暗闇のダウンヒルに慣れているから?)。
 そして5:05、実に足切りタイムの13分前のギリギリの滑り込みという形で、PC5のCARHIX-PLOUGUERに到着した。いやー、焦った焦った。
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PC5:CARHIX-PLOUGUER~PC6:BREST
 
とりあえずここまで32kmしか走っていないため、スタンプ押印とトイレだけ済ませてさっさと離脱する。お次はいよいよ折り返し地点のBRESTである。
コース中の(たった350mではあるが)最高標高地点に向けて緩やかな登り基調の道を進んでいく。この道中では少しの間だけあおばジャージを着た、夫婦で参加されている方たちと少しお喋りしながら進んだ(きっかけはやはりブリだった)。
 最高標高地点に到着し写真を撮るためにスマホを取り出してみると、複数人からLINEやTwitterでコメントがきていた。あ、そうだ。俺今日誕生日だったわ。仮眠から目覚めてからあまり余裕が無かったため、ようやくここで気付いた次第である。このような夢にまで見た大舞台で誕生日を迎えられたこと、それ自体が何よりもバースデープレゼントである。そんな想いを抱き、様々な人達へ胸中で感謝を述べながら、ダウンヒルを開始する。周囲の人達に「Today is my birthday!」とアピールできるコミュ力など無い。
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 そういえばこの区間ではベロモービルの登坂性能とダウンヒル性能の極端すぎる差が面白かったのが印象的だった。リカンベントやタンデムもそうなのだが、これらのスペシャルバイク枠の自転車とは『登りで追い抜いて下りで凄い音を立てながら追い抜かれる』を繰り返しながら走る形となるのだ(17:15スタートのF組がこんな場所にいることは心配だが…)
 そうしてこれまでの田舎道とは打って変わって、それなりに栄えた街の中を通過することになる。そう、いよいよBRESTの街に入ったのだ。印象としては日本の地方の県庁所在地くらいか。自動車の交通量も増え、信号や一時停止もそこそこ見かけるようになる。にも関わらず、道幅いっぱいに広がって走行するのはいかがなものか?おかげで後ろから来る車の進行を完全に妨げる形となってしまっている。自転車やPBPに対する理解があるフランスの国民性か、道が開けるまでドライバーはみんな待ってくれていたが、個人的には流石にクラクション鳴らしても良いんじゃないかと思う…。
 そんなこんなで9:35にとうとう折り返し地点であるPC6に到着。経過時間は38時間35分と計画より30分早い到着である。ひとまず例によってスタンプ押印とトイレを済ませ、補給食を食べながらチェーンにオイルを挿していく。あ、ヤベ、勢いよく出過ぎて誤って後輪にオイルがかかってしまった…。空気入れも借りたかったし、メカニックブースまで拭き取ってもらうよう頼みに行くか…(料金は無料だった。メルシー)。ちなみにここで得た豆知識を一つ疲労しておくと、空気入れは『フロアポンプ』ではなく『タイヤプレッシャー』と言えば通じる。とりあえず前後共に23Cのタイヤに6.5barまで空気を入れ、シューズカバーと反射ベストを脱ぎ、グローブも夏用に変えたところで準備完了。10時20分にリスタートを切る。残り時間は50時間40分…まぁ、さすがにこれはもう勝ち確でしょ。勝ったなガハハ。また600kmもかけて来た道戻るの…?もうお腹いっぱいだよ…。
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PC6:BREST~PC7:CARHIX-PLOUGUER
 いよいよ後半戦のスタートである。そして前述した通り、私は今まで1000km以上のブルベに出走したことが無かったため、ここからは完全に未知の距離である。耐えてくれよ、俺の身体…!
 ひとまず様々な飲食店の誘惑を断ち切りながら街中を通り過ぎていくと、港町らしいフォトジェネックなスポットが視界に入ったのでパシャリ。まさか自転車に乗って大西洋を拝む日がくるとはね…人生ってホント、何があるかわかりませんね…。
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 そんな感慨に耽りながら走っていると、今度はすぐにまたPBP中の名所であるプルガステル橋が現れる。やはりここで写真を撮っている参加者達も多い。私もせっかくなのでここでもまた写真を撮る(危うくブリを忘れて置き去りにするところだったが、数百m走ったところですぐに気付いたことで事なきを得た)。
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 プルガステル橋を超えたところでイチゴを配っている人達がいたのでありがたく頂戴しつつ、また草原の中に戻っていく(果物特有の酸味が心地よく美味しかった)。そこから15km走った先のDaoulasという街でちょうどお昼時を迎えたため、目に入ったパン屋『Le Goff Fabien』でチョコデニッシュとクロワッサンと缶のOASISを購入(ついでにトイレも借りた)。うっま、何色パティエールだよ!?とあっと言う間にガツガツと食べ終わり、また走り始める。
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 時刻も12時を回ったということでジリジリも気温も上昇。やはり例によって温度計は30℃をマークしていた。こりゃ今日も高温環境との戦いになるな…っていうか誰だよブルターニュ地方は涼しいとか言った奴…と呪詛の言葉を心の中で繰り返しながら走っていると、あることに気付く。あれ?何か斜度キツくない?確かにこのPC6~PC7の区間は93kmで獲得標高1190mという、かなりガッツリとした峠を越えるのと同じレイアウトであることは知っていたのだが、精々これまでと同様最大5%くらいの緩い登坂とダウンヒルを繰り返す感じだろうと判断していた。しかし、サイコンの勾配計は7~9%の間をずっと行ったり来たりしている。というか、車種問わず押し歩いて登ってる人沢山いますね…。眼前にはパンチの効いた勾配の坂、頭上には容赦なく降り注ぐ太陽光、そして我が身は630kmを自転車で走ってきた疲労の身体…。経験上、ここで強度を上げて無理矢理走ると、間違いなく熱中症によるダウンが待ち構えていることはわかったため、適宜水を被りながら強度も上げずにやり過ごして走るモードに切り替える。また、ここは完全に新規ルートであるせいか、私設エイドの数もこれまでの道中より明らかに少なく、水も無暗に使うとマズい。逆に水を配ってくれている人がいたら率先して給水だけでなく、頭~背中にかけてもらう。もう完全に日本の夏なんよ…。そしてこんな区間をグロス19km/hで走る前提で計画を立てた過去の自分を呪いつつ、ゆっくりと前に進んでいく。しかしあまりにも暑い。そして少し眠気も感じる。だったらこんな地獄みたいな高温環境の中での走行時間を少しでも減らすために、夜寝る時間を削る形で今ここで昼寝をした方が良いんじゃないか?…と考えたところでちょうど木陰のある芝生が目の前に出現したので、そこで20分ほど仮眠休憩を取ることにした。「事故って倒れたとかではなく、あくまで休憩しているだけですよ」とアピールするために、枕代わりのナップザックをサドルバッグから取り出し頭の下に敷く。スマホも20分後に鳴るようアラームをセット。うーん、虫の羽音が五月蠅いな…っていうかこれ、アブに刺されません?と少々不安になりつつ目を瞑る。(なお、繰り返すが公道上でのこういった仮眠は本来褒められるものではなく、PBP中でもなければ警察沙汰になってもおかしくないことは、改めて強調しておく。ましてや日本国内では決してやるべきではない。最低でも公園のベンチや道の駅の休憩所を利用するべきであろう。)
 ピロンピロンピロンピロン♪…きっかり20分後、かけていたアラームが鳴ったので即座に起き上がる。こんな短い時間だが、頭の中が驚くほどクリアになったことがわかる。走り始めても脚の方もかなりしっかり回せるようになっている。気温は相変わらず灼熱の様相を呈しているので調子に乗って踏むとヤバいが…ひとまずえっちらおっちらと走り始める。これは少しでもテンションをアゲていかないとヤバいな…というわけで音楽スピーカーの電源を入れる。道中でブリを運びながらアニソンを垂れ流す東洋人のおっさんがいたら、どうも私です。ちなみにT.M.Revolutionの『Meteor』が流れている時に西洋人から「GUNDAM song?」と聞かれたことには驚いた。とりあえず「That's right!」と返しておく。海外でのガンダム人気ってガチなんだな…と謎の感動を覚える。
 そしてBRESTから50kmほどの距離にあるPleyben(プレバンと読むのかな?プレミアムバンダイは関係無い)という街でシークレットPCが現れる。何もこんな厳しい区間に設置しなくても…運営はサドなのかしらん?とか益体も無い事を考えつつ、ブルベカードにスタンプを押してもらいトイレを済ませ、CARHIX-PLOUGUERを目指す。
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 相変わらず高気温・高勾配という地獄みたいな道のりを乗り越え、とうとうCARHIX-PLOUGUERまで戻ってくることができた。そしてPCの入り口付近に…ありました
みんな大好きマクドナルドです。
 この時点で計画より1時間ほど遅れていたものの、クローズ時刻までは3時間近く余裕があったため、腹ごなしとトイレをここで済ませるために立ち寄ることにする。何より「本当にビッグマックの味は世界共通なのか?」を確認したいという欲求が強かった。…同じことを考えているのだろうか、私の他に何人もランドヌール達がいたのには思わず笑ってしまった。
 とりあえずまずはトイレを済ませた後に(すぐに入れた上にやはり綺麗だった)、注文ボードで日本でもお馴染みのビッグマックセットを頼む。…が、何故かクレカでの決済がうまくいかず(タッチ決済対応じゃないと駄目っぽい?)、結局レジで会計をするために無駄に時間を消費してしまった。そして席につき待つこと数分。注文したビッグマックセットが運ばれてきた。ポテトはプラケースに入れられており塩っけはかなり薄味と、少々日本とは勝手が違うなと感じたが、ビッグマックの方は完全に一致である。世界規模のチェーンって本当に凄いですね…おみそれしました。(どうでもいいが、フランス人も我々関西人と同様に、マクドナルドは『マクド』と略す)
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 パパッと平らげPCに向かい、スタンプカードに証跡を押印してもらう。ボトルに給水を行い水を頭から被り、17:20と計画表より1時間20分遅れてではあるが、早々にPCを離脱した。まだしばらく灼熱との戦いは続きそうである…。
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PC7:CARHIX-PLOUGUER~WP4:Gouarec
 
ようやく地獄みたいな斜度の区間を脱し、また3%前後の登坂を繰り返していく。しかしこのフランスとかいう国、本当に平坦が無いな。『少ない』とかではなく本当に『存在しない』のである。脅しでも何でもなく「自分、坂は大嫌いだからSR600には絶対に出ないんですよ~」みたいな人は多分完走はできないんじゃないかな…。途中、絵に描いたような『ザ・ヨーロッパ!』みたいな街並みの写真を撮ったことは覚えているのだが…この区間、いやに目についたのはいわゆる立ちションである。PC間の距離が離れている区間だとか、深夜早朝で店も何も開いていないという状況なら一万歩くらい譲ってわからなくもないが、そうでもないこの区間・時間帯でそれをする理由って一体何なんだろう?「立ちションはフランスの文化」みたいな言葉もあるらしいが、ちょいとスマホで調べたら公衆トイレや高確率でトイレを貸してくれそうなスーパー、飲食店、教会の位置などすぐにわかるであろう。というか普通に犯罪である(フランス刑法の条文を調べても、やはり場所を問わず罰金刑である)。教えはどうなってんだ教えは。今後PBPに参加される方で、もし「立ちションは時短テクニック」みたいなアドバイス(笑)を聞いたとしても決して真に受けるべきではない、と考える(当たり前だが、日本国内でも同様に論外である)。個人的に言わせていただくなら、立ちションはただの準備不足であり恥ずべき行為である
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 そうしてWP4のGouarecに18:55に到着。まだ日は高く気温は31℃をマーク。とりあえずまたトイレ・給水・水浴びを済ませる。そして今日はここから110km先のWP5:Quedillacで仮眠予定であったが、ある一つの考えが頭をもたげる。

あれ?これもうあと110kmも走るのキツくね?


WP4:Gouarec~PC8:LOUDEAC
 
とりあえず19:10にWPを出立する。この時点で計画からの遅れはきっかり1時間。貯金としては2時間30分だが、このままのペースだとまとまった睡眠時間を確保することは厳しい気がする。まぁ、いいか。
とりあえず今日は次のLOUDEACで終わりにするかQuedillacで終わりにするかは、LOUDEACでシャワーを浴びながら考えよう。
 そんなことを考えながら時折現れる急勾配を越えていく。うーん、左手が痺れてきつつあるな。化粧用のパフを掌に仕込んでいるが、やはり限度があるか…。斜度が緩い登りでは極力左手に負担をかけないように走っていると、そろそろ日没というタイミングでちょうどどこかの街の墓地が現れる。個人的に異国の墓地を見学するのは好きだ。別にサイコパス不謹慎な理由ではなく、お墓はその国の宗教観が強く出るため単純に興味深いのだ。そういうわけで柵越しに見学をしつつ反射ベストを着込み、前後ライトとサイコンのバックライトを点灯させる。この時間帯にもなるとやはり急激に気温も下がり、20℃程度となる。その点ではすこぶる走りやすくはなってくるのだが、左手の痺れが辛い上にここまで斜度が厳しい区間と高温環境を走破してきたのだ。流石に脚が売り切れるのも時間の問題というか、もう既に120Wを出すことも正直辛い。
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 そうして21:45、実に350kmぶりにLOUDEACに戻ってきた。往路と同じ場所に駐輪し、これまた往路と同様のタスクをこなしていく。ただ、今日は既に気温が下がっている時間帯のおかげで、脱衣所の不快指数が非常に低かったのは良かった。
 そしてここで左手に異変を感じる。中指と人差し指を伸ばすと一瞬間接を曲げれなくなった。本当に一瞬のことでありすぐに元に戻ったが…シャワーを浴びて新しいウェアに着替えると、すっかり糸が切れてしまったこと、これくらいの気温であれば、空調設備が無くあんまり質が良いとは言えないらしいここの仮眠所でも普通にぐっすり眠れそうであること、計画より50分も遅れていることもあり、少しでも時間効率を追求するとやはりこのまま
LOUDEACで寝た方が良いだろう…と判断し、仮眠受付に向かうこととした。
 え~っと、次の足切りタイムがあるのは85km先のTINTENIACか…確かこの先はそんなに厳しくないどころか下り基調になるから、グロス20km/h=4時間くらいで走破することは十分に可能だろう。クローズ時刻が8:45ということは…4時半にここを出発すれば良いか…と、ここまで計算していたら丁度自分の順番が回ってきたので、起床希望時刻を4時と伝え、支払いを済ませる。この時の時刻は23:45。まぁ、昼寝もしたし4時間ちょいも寝れたら上等だろう…と考えたところで自分が使うベッドに案内される。
ちなみに参考までに、中の様子は

・4人分の簡易ベッドが1組となるように、ピッタリくっつくように配置されている
・薄手のブランケットが1枚
・冷暖房の空調は無し
・起床希望時刻毎に案内される区画が分けられている

といった塩梅であった。なるほど、これなら確かに一桁気温なら寒くて寝てられないのも頷けるし、そもそもこれ、足元に誰かいたら蹴り飛ばしちゃいませんかね…?と不安になったものの、極力周りに誰も使っていない区画を案内するようにしてくれているらしく、一番端っこで他に誰もいない場所を案内していただいた。そのおかげかイビキはそこまでうるさいとは感じなかったが、念のためこれまた寝ホンを耳に突っ込み、寝入ることにする。
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15さんのTwitter投稿より(本人より転載許可済)


 仮眠場所を前倒しにすることで、当初予定していた明日の走行距離が260km→320kmに伸びることになってしまったが…まぁ、そこは明日の自分に頑張ってもらうことにしよう。おやすみなさい。

じかーい、じかい↓
PBP2023レポート⑦ : 凡脚週末ローディの戯言 (livedoor.blog)

全開の記事はこちら↓
PBP2023レポート④ : 凡脚週末ローディの戯言 (livedoor.blog)

PC1:VILLANES-LA-JUHEL~PC2:FOUGERES
 
むくり。目を覚まして時刻を確認すると6:00ちょうど。あと10分寝れそうな気はするが、ここで二度寝するとがっつり寝過ごしてしまう可能性がありますね…ということで少々早いけど起床する。出走直前の仮眠時間とあわせると大体約5時間弱。社畜ちょっと忙しい社会人の一日の睡眠時間とほぼ同じと考えたらまぁ、辻褄は合っているだろう。なるべく音を立てないようにそそくさと仮眠所を後にし、歯磨きと洗顔をちゃちゃっと済ませ(こちら側のトイレは綺麗でかつ人も全然いない人権仕様だった)、朝ごはんに補給食として持ち運んでいたスローバーと羊羹をいくつかmgmgしながら駐輪場に向かう。気温は15℃程度か。これくらいなら私としては防寒具は不要だが、日本と違い日が昇るまではあと1時間弱あるため反射ベストは着用する。少しTwitterを確認し、友人達(大学のサイクリング部時代の同級生達)の応援LINEに返事をしつつ、予定通り6:40にリスタートをきる。さて、今日のノルマは280km先のSaint-Nicolas-du-Pelemまでか。天気は晴れ予報。今日も一日がんばるぞい。
 出発して早々、道沿いに牛たちが放牧されている風景が目に入る。少々肌寒いと感じる外気温と相俟って、まるで早朝の高原にいるかのような清々しさだ。
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 そんな爽やかな気分で走っていると、これまたすぐに大規模なエイドステーションがあったので折角だし立ち寄ることにする。ウィンナーが挟まれたバゲットとオランジーナを注文しむしゃむしゃしていると(確かあわせて5€もしなかったはず。PCより断然安い)、tessyさんがやってこられたので再会のご挨拶。私より1時間後の出走なのに随分とお速い…と思っていたところ、眠気も大丈夫そうなのでスタートから仮眠無しでこのまま1スティントでルデアックまで行かれるとのことだった。なるほどね。

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 ゴール後の無事の再会をお互いに祈りつつ、食事を終えたのでリスタートを切る。日もだいぶ上がってきたしもう大丈夫だろうということで反射ベストはここで脱いでおく。道中の喫茶店で一息つきつつトイレも済ませ、特に危なげなくPC2のFOUGERESにこれまた計画通り10:50頃に到着。ブルベカードにスタンプを押してもらい、ボトルに水だけを補充して10分程度で離脱する。

PC2:FOUGERES~PC:3TINTENIAC
 
さて、灼熱地獄の始まりである。伝え聞いていた通りフランスは街と街の間は本当に森か草むらか放牧地しか存在せず、あー、一面のクソミドリ空調の効いたコンビニや飲食店等の気の利いた建造物どころか日差しを遮ってくれる木陰も限られる道のりとなっている。そして12:30現在、サイコンはもう既に30℃を示している。さらに言うとフランスの気温のピークは17:00±2時間である。こりゃおそらく34℃くらいまで上がるな…あついしぬと心の中で繰り返しボヤきながら水を被りつつ強度を上げ過ぎないように走る。こちとら5℃~25℃を想定した装備である。僕の中の藍染惣右介が「いつから"地球"温暖化の影響を受けているのが日本だけだと錯覚していた?」とドヤ顔で語りかけてくる。次回以降参加される方は、持ち込む荷物は増えてしまうが『5~25℃』と『15~35℃』対応のウェアのセットを両方用意していくことをオススメする。

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 あまりの暑さにこりゃあ辛抱たまらん!というタイミングでPCのあるTINTENIACの街に入る。空調が効いていそうなケバブ屋で昼食がてらハンバーガーを食べつつ身体をいったん冷却し(味・価格共に可もなく不可もなくと記憶している。トイレは借りれなかった。残念)、我ながらドン引きするレベルで計画通りの時刻である14:20にPC3へ到着した。ここは先ほど食事を済ませたばかりでもあるので、スタンプをもらった(おしゃれなポストカードも三枚渡された)後はトイレを借りてボトルに給水だけ済ませ(頭から水も被った。気分はまさに文鳥)、15分程度で早々に離脱した。
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PC:3TINTENIAC~WP2:Quedillac】
 この区間は25kmと距離は非常に短いが、何せ灼熱地獄である。更にスタートから350kmを超えてきたこともあり、途中でまとまった仮眠を取らずに走り続けている人も多いせいか、いわゆる『ゾンビ』と化している走者が目につき始めてくる。そうなるとやはりそれに比例して道端の木陰の芝生の上で仮眠する人の数も増え始めてきた(流石にうつ伏せになっている人には「Are you OK?」と声を掛けてしまった。結果的には「OKOK」とのことでただ昼寝していただけだったようだが、マジで紛らわしいからせめてあおむけで寝て欲しい)。なお、道端で寝る行為が見逃されているのはいかにフランスといえどもPBP中だけの特別なことのようであり、平時であれば容赦なく警察沙汰になるとのことである。言うまでもなく、このノリを帰国後の日本に持ち込むことは言語道断であることは強調しておく。
 そして15:35に
WP2のQuedillacに到着。ここでもやはりトイレと給水と水浴びのみ済ませ、さっさとリスタートを切る。
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WP2:Quedillac~PC4:LOUDEAC】
 ええい、暑い!…とまぁ、この区間はひたすら暑かった記憶しか無い。サイコンの表示は34℃を示している。これもう日本と殆ど変わらないじゃん…。それ以外では途中の街で教会の鐘が鳴っていることに改めて異国情緒を感じたことくらいだろうか
(日本で寺社仏閣で鐘が鳴るの、大晦日くらいですからね)。しかしこのコース、本当に私設エイドで食料や水が補給できないと難易度が激変するだろうな、特にこの高温環境だと…。と、日本の自販機やコンビニといった存在に思いを馳せていたことはよく覚えている。アイスが食べたいよ…。
 そんなこんなで何とか焼き殺されることなく
PC4のLOUDEACに18:30に到着。きっかり計画より30分早く到着することができた上に、本当にたまたまであるが給水&ドロップバッグ設置場所の近くに駐輪することができたのはナイスプレイであった。
 さて、ここでのタスクは非常に多い。
 ・ブルベカードに押印
 ・ドロップバッグにアクセスし、補給食やライト類、モバイルバッテリーの補充と給電および交換
 ・シャワー&着替え

 とりあえずまずはスタンプを押してもらいに行き、例によって即座に「日本人のための荷物置き場はどこか?」とフランス語で記したスマホの画面を見せる(おそらく『ドロップバッグ』は和製英語で通じないだろうと思ったため)。英語を話せるスタッフに場所を教えてもらい荷物から着替えとタオルとシャンプーセットを取り出す。スマートウォッチやライトを、重くて流石に持ち歩く気にはなれない大型モバイルバッテリーで充電しながらシャワールームに向かった。受付でお金を払い「確かにこれは使う気になれないな…」としか思えない紙タオルを手渡され、脱衣所に向かう…が、とにかく蒸し暑い。まさにちょっとしたサウナの様相を呈していた。まぁ、それでも汗を流して新しい服に着替えたら大分不快指数も下がるだろう。テルマエ・ロマエ♪と前向きに考えつつシャワールームへ。
(テルマエ・ロマエはイタリアなんだよなぁ)
 ここのシャワールームもやはり部活終わりの学生さんが使うような設備だったが、お湯はしっかり出るのでそれ自体は特に悪くはなかった。汗を流し人権を取り戻しつつ着替えも済ませ(脇にデオドランドスティック、股間に皮膚保護クリームを塗って髭を剃っていたら「ビューティホーランドヌール!」と褒められた。…褒められたのか?)、さっさと外に出る。そうしてまたドロップバッグ保管場所に戻り着替え終わったウェア類などを再度バッグに突っ込み、補給食やモバイルバッテリー等の交換・補充も済ませ再スタートを切る頃には、1時間40分ほどが経過していた。当初の予定では1時間のみの滞在の計画であったのだが、やはりここは時間を喰いますね…。時間効率を考えてここで仮眠する人も多いようであるが、空調設備も無くあまりいい環境とは言えないと聞いていたため、私は次のWPである
Saint-Nicolas-du-Pelemまで行く予定であった。
 なお、LOUDEACの街には2023年7月に開業したibisホテルができており、そこで二連泊を抑えていた人も多かったようである。間違いなく争奪戦になるであろうが、可能であれば次回以降参加される方はそこを抑えることを絶対にオススメしておく。シャワーも睡眠もより良い環境で済ませることができ、電子機器類への充電も遥かにやりやすいであろう。きちんとしたベッドで眠れるということで疲労回復の質も段違いのはずである。
 というわけで巻いた以上の時間を喰い潰して20:10、計画より10分程度遅ればせながらリスタート。今日のタスクは残り47kmである。
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PC4:LOUDEAC~WP3:Saint-Nicolas-du-Pelem
 日没も近いということで気温も下がりつつあり、そういう意味ではだいぶ走りやすくはなっていた。…というかおフランスの一日の気温変動、いくらなんでも激し過ぎません?ついさっきまで30℃超えていたと思いきや、30分後には20℃台前半まで一気に下がるみたいな、マジでそんな感じである。いや、まぁ、個人的にはありがたいんですけどね…と思いつつ、反射ベストを着込んで前後ライトも点灯させる。ちなみにこの区間、計画表を見ていただくとおわかりいただけるのであるが、全行程の中で二番目に厳しい区間となっている(距離あたりの獲得標高)。まぁ、しかし汗を流し着替えも済ませたあと、気温も20℃台前半とだいぶ快適に走れる環境が揃っていたため、割とハイテンションに走ることができた。5%前後の登坂とダウンヒルをえっちらおっちらと繰り返し(昨日も思ったがPBP名物である、参加者達のテールライトが連なる『ランタン・ルージュ』が幻想的だ)、今日の寝床まであと6kmという場所(Canihuel)で前走者が全員立ち寄る場所に出くわす。大規模な私設エイドかな?と思いきやシークレットコントロール(以下、シークレットPC。事前に知らされない抜き打ちPCのこと。足切りタイムの設定は無いが、ここの通過証跡が無いと認定は得られないので絶対にスルーはできない)であった。「あれ?WPがシークレットじゃないんだ…でも何でこんな次のWPの目と鼻の先に?」とは思ったものの、真相は運営じゃないのでいくら考えてもわからない(ガチの不正防止という説もアリ)。とにかくスタンプをもらって先を急ぐことにする。
 シークレットPCから20分足らずで、本日の仮眠場所と決めていた
WPのSaint-Nicolas-du-Pelemに到着。
やっぱりここがシークレットでよかったのでは…?時刻は23時きっかりで計画より30分押し。当初はPC内レストランで晩御飯を食べてから寝ようかと思ったが、そこはスキップして睡眠時間を確保した方が無難だな…。トイレと歯磨きだけ済ませてそのまま仮眠受付まで向かう。再出発は3:20を予定していたのでその30分前である起床希望時刻を2:50と伝えたところ、「30分単位だ」と言われてしまったため3:00に指定。まぁ、20分もあれば大丈夫だろうと思いながら仮眠所のベッドを案内される。中は暖房が効いていて寒くも暑くもない良い塩梅。これならぐっすり眠れそうだと考えながら、目を瞑る。明日は360kmと全行程で一番長い距離を走る予定だな、ここでどれだけ体力を回復できるかな?…暑くないと良いなぁと考えたあたりで意識がトんだ。おやすみ~。IMG_9960

じかーい、じかい↓
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