既にTwitterで目にした方も多いかもしれませんが、10/30より始まっているシマノ製クランクのリコール対応の件について、思うところがあったので下記内容にて経済産業省へメールしました。(最初は消費者センターに問い合わせしたところ、リコール対応後は管轄が消費者庁から経産省になるとのことでした)
 ボスが公開しろって言うから…備忘録も兼ねて、もし私と同じく「最初のお店では良品判定だったけど、やはり心配だから他のお店に持ち込んでも良いのかな…?」とお悩みの方がいらっしゃったら参考になるかも…と思ったのでここに公開いたします。

経済産業省 御中


お世話になります。

10月30日より『当該製品の一部において接着された箇所が剥がれ、稀に破損しバランスを崩して転倒し、ケガをするおそれがあるため。』として対応開始となった『「自転車用クランク:シマノ製 ロードバイク用リア11段変速対応 ホローテックⅡ(中空)クランク」-点検交換(管理番号:00000031490)』について、その実施内容が『ユーザーの安全確保』ではなく『自社の損失軽減』を重視しているように見受けられます。つきましてはその実施された点検内容についてご確認された上で、適当ではない場合は株式会社シマノ(法人番号:3120101003399 以下、(株)シマノ)へ是正を促していただきたく、よろしくお願いします。

 

1.  リコール内容

詳細は下記URLの通りである

https://www.meti.go.jp/product_safety/recall/file/231030-1.html

 

2.  点検内容

上記リコール対応の『無償点検』の内容については以下の通りである

(1)点検内容のマニュアルが(株)シマノより各スポーツ自転車販売店(以下、販売店)へ配布される

①リコール対象製品(以下、クランク)を自転車本体から取り外し、(株)シマノが指定した箇所の汚れを中性洗剤で落とし、目視にて剥離や亀裂が発生していないか確認する

②点検者の主観によって、良・不良を判断する

③不良と判断された場合、各製品に応じた代替品がシマノより支給される

④良品と判断された場合、一年後に再度販売店が同様の点検(以下、再点検)を行う

⑤良・不良の結果はシリアルナンバー毎に管理・登録され、点検日から一年が経過するまで他の販売店等で再点検が不可能となる

 

(2)点検を実施した販売店には(株)シマノより工賃が支払われる

①点検結果に関わらず、支給される工賃は同額である

②再点検の際に、再度工賃が支払われる

 

(3)責任の所在

①点検終了から一年間が経過するまでの間に製品が破損した場合、その責任は(株)シマノが負う

②再点検後の責任の所在については不明である(2023年11月現在)

 

参考URL: https://3196kintarou-blog.com/blog-entry-9052.html?sp

 

 

3.自身の経緯(実例)

(1)2023年11月6日(月)にリコール対象クランクを2set、店舗A(大阪府大阪市)へ点検依頼のため持ち込み

①事前に自身で目視にて簡単に確認したところ、不具合と思われる亀裂・傷が見受けられた

②預ける際に①の旨を連絡

 

(2)2023年11月25日(土)に店舗Aより点検が完了した旨の連絡

 ①点検結果は「2setとも良品」とのことであった

 ②自身で確認できた亀裂・傷の箇所について指摘したところ、「継続使用は問題無し」との回答

 

(3)2023年11月26日(日)に自費前提にて店舗B(大阪府堺市)へ再点検を依頼するため持ち込み

 

(4)同日、店舗Bより2setとも不良品判定の報告

 ①検査費用は本来であれば有償となるが、結果的に不良品であったことから店舗Bの方から(株)シマノへ請求する形で決着

 ②2.(1)-⑤についても、店舗Bが(株)シマノに代替品の送付を交渉・依頼

 

(5)2023年11月29日(水)、(株)シマノより代替品支給

 

4.問題点

(1)点検を対応する販売店にとって、極力工数をかけずに件数を伸ばし、良品判定を出した方が利益追求という点では『最適解』となる。5.(1)にて後述するが、本点検プログラムに際し自転車を持ち込んだユーザーに対し「商品クーポン配布」を実施している販売店まで現れている。

 ①支払われる工賃は判定結果によらず一定

 ②不良品と判定した場合、対策品の取寄せ・報告・車体への組付けやそれに伴う各種調整等工数増大

 ③再点検時にも工賃が支払われる

 ④再点検までの一年間で発生した事故は、(株)シマノの責任となる

 

(2)交換対応となった場合(株)シマノにとっても人的コスト・輸送コストが発生し、また当然対応用に製造された交換用の部材も減少する。後記5.(5)で取り上げているBike Radarの記事によると(株)シマノは不良率を1%以下と見積もっており、同社第117期3四半期の有価証券報告書で計上している特別損失額170億7400万円はこれに基づき見積もり計上していると考えられる。検査不良率が想定を超えた場合は前述したコストに加え、追加的な製造により原材料費等の製造コストや製造ラインの使用による他商用製品の製造遅延も発生する。つまり検査不良は低い水準であることが同社にとって好ましいと予想できる。

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS02673/658d0df9/d0de/4b09/ae82/52e319a921ae/S100S682.pdf

 

(3)販売店と(株)シマノがそれぞれ(1)と(2)の経営判断をした場合、両者の利害は一致することになる

 

(4)また、(株)シマノと販売店との利害関係の一致はなくとも、点検者によって判定結果に差異が出ることにより、本来は不具合品であったものが良品と判定され、一年間も危険な状態で公道を走行する車両が発生する可能性がある

 

5.その他

(1)店舗Aは系列の全店舗で点検を依頼した者に対し、商品券を配布している

 

(2)クランクアームの剥離という事象については以前から話題となっており、2017年頃からインターネット上で確認可能

http://suzukifronte360.livedoor.blog/archives/17145289.html

 

(3)本リコールがアナウンスされるまでは「製品不具合ではない」として、ユーザー側が自費にて代替品購入という形で対応していた

 

(4)米国では本リコールを巡り、「消費者を犠牲にして問題解決の費用を抑えようとしている。」として(株)シマノは集団訴訟の被告となっている

https://www.bikeradar.com/news/shimano-crankset-class-action-lawsuit/

 

(5)(株)シマノとしては不良品の発見率は1%未満、それに関する特別損失額は170億円程度と当初は見込んでいる

https://news.yahoo.co.jp/articles/d2904972d685d4e49ae4c11b79cd9448731470aa

https://www.bikeradar.com/features/opinion/shimano-crankset-recall-analysis/

 

6.総論

以上により、消費者側としては(株)シマノの本クレーム対応が、本当に使用者の安全確保を目的とした適当なものであるのか大きく疑問が残るものである。自転車とは公道を走行する車両であり、使用中に不具合が万が一にでも発生した場合、死亡・重度後遺障害などの重大事故に直結する可能性を孕んでいる。

上記の点を踏まえて貴省からも改めて内容や実情をご確認いただき、内容や構造に問題点があればメーカーでの全数検品または交換など、是正を促していただきたく、よろしくお願いします。




以上が内容となります。
これに対する経産省からの返答は下記の通りでした。

ご連絡いただき、ありがとうございます。

いただいたご意見について、リコール実施事業者(株式会社シマノ)に伝えてお伝えします。

また、同社から販売店に対し、危害の発生及び拡大を防止するための必要な措置をとっていただくことを周知するようにお伝えします。


お役所仕事か?
僕からはもうこれ以上何もしようがないので、
もし点検店やシマノの対応に不安・不満があったり、実際に良品判定が出たにも関わらず一年と経たずクランクが剥がれてしまった人は、ぜひ経産省へチクって連絡してみてください。