前回の記事はこちら↓
http://gutti0822.livedoor.blog/archives/21641032.html
【PC8:LOUDEAC~WP5:Quedillac~PC9:TINTENIAC】
「イッツタ~イム」
眼前にお年を召されたご婦人の顔が広がっていた。なるほど、これがLOUDEAC名物ブルターニュおばちゃんのASMRか。時刻はAM4:00ちょうど、申告していた希望時刻きっかりである。いや~、なんてサービス精神旺盛なんだ、おかげで快適な目覚めだぜ。おはようございます。
気温は15℃程度で少し足元は冷えている感覚があり少し肌寒くはあったが、やはり思った通り眠れないほど致命的な冷え込みとはならなかったのは僥倖である。
よし、まずは歯を磨いてから朝ごはんがてら補給食を食べる、いつものルーチンに入るか…ということでナップザックの中を漁ると歯ブラシが見つからない。恐らく昨夜シャワールームに忘れたな…と思い、スタッフに忘れ物として届いてないか確認するも無いとのこと。シャワールームにお邪魔させてもらうもやはり発見できず。うーん、これ捨てられちゃいましたね…。仕方ない。道中のスーパーで調達するしかないか…と早々に見切りをつけ、人権を失った口に補給食を突っ込みながら準備を終える。ライトを充電が完了しているものに取り換え、ドロップバッグに不要なものをぶち込み再出発を図る。時刻は少し予定を押して4:40…ちょっと巻きのペースでいく必要はあるし口の中が気持ち悪くていきなりテンションが下がっているがまぁ、なんとかなるべ。
口の中の雑菌による不快感と目の前を塞ぐゾンビ走行集団と戦いながら(フラフラな状態で反対車線走るのは勘弁してくれ。っていうかDNFしてくれ…)、下り成分多めのアップダウンを越えていく。しっかり眠れたおかげで脚は調子よく回る。やはりLOUDEACで仮眠を入れて正解だった。左手も痺れと痛みは感じるがしっかり動く。特にレバー操作に支障は無さそうだ。というわけでグロス21km/h程を維持しながらまずはWP5のQuedillacに到着。念のためシークレットPCではないかを確認…うん、大丈夫だ。というわけで立ち寄らずにそのままTINTENIACに向かう。どうせ25kmと近いし特に尿意も無い。補給食も十分過ぎる量だ。
そうしてTINTENIACに向けて走っていると、後ろから来た西洋人から割と流暢な日本語で「あなた日本人ですか?」と声を掛けられる。「Yes,I am Japanese!」と返そうかとも一瞬考えたが、ここは敬意を表し日本語で「そうです。日本語お上手ですね」と返答する。なんでもイタリアトルコだったから来られた方で、日本文化が好きで日本語を学んでいるらしい。「私、新幹線。あなたは?」と物凄いイキリ脚に自信があるようなことを言ってきたので、「Unfortunately,I'm a local train!」とニューホライズンに例文として載ってそうなセリフで答えて先に行かせることにする(発音が壊滅的なので、どこまで伝わったかは不明だが)。楽しかったぜ、Bullet train man…お互い無事にランブイエまで辿り着こうな!
約20分後、先ほどの新幹線マンを追い抜いた辺りで霧が出てきた。何とも幻想的で実にヨーロッパらしい光景である。日ももうすぐ上がる時間帯であるが、これならライトはしばらく点けっぱなしの方が良いだろう。それにしてもいい加減歯を磨きたいぜ…と思った頃にPC9のTINTENIACに到着した。時刻は8:05。わーい、40分も貯金ができたよ!ということでまずはブルベカードに押印してもらいに行く。ついでにトイレで軽量化も済ませるか…と思ったが、便座の無いタイプしかなかったので一旦保留。
イライラのあまりブリにやつあたり
そしていよいよ口の中の不快感が限界突破しつつあったので、近くに開いているお店が無いかグーグル先生に調べてもらうと…PCを出た直度にスーパーUがあり、もう既に開いていることを確認。じゃあもうジュース買ったりなんだりといった休憩はこっちで取るべということで、すぐに移動を開始する。余談だが、この時駐輪場で落としたブリを拾ってもらった際、思わず「Sorry」と言ってしまったら「おいおい日本人、こういう時は"Sorry"じゃないだろ?(ウィンク)」という、テンプレのようなやり取りが発生した(「Thank you!」と言い直しておいた)。
まだ開店直後のためか、客は私以外に数人しかいない。とりあえずまずは軽量化だとお尻セレブを背中のポケットに入れてトイレに向かったのであるが、えぇ…何でここも便座が無いの…?(困惑)いや、確かに綺麗ではあるんだけど…。まぁ、でも仕方がない。ここで便座無しの洋式トイレを経験することで、新たな見識を得られるかもしれない。男は度胸!何でもためしてみるのさ。
自分の中での『絶対に使いたくないトイレランキング』のワースト1位が和式から便座無し洋式に更新された後(780km走ってからの空気椅子は拷問である)、旅行用の歯ブラシセット(分割式でめっちゃ便利そうだったので、予備も含めて2セット)とオランジーナを購入する。これにてようやく口内の人権を回復することに成功。60km先の次のPCであるFOUGERESの街を目指す。
【PC9:TINTENIAC~PC10:FOUGERES】
えっちらおっちらとまた無限アップダウンのコースに戻る。う~ん、しかしいい加減このどこまでも続く未開拓の大草原は飽きてきましたね…。街に入ると西洋建築が珍しい文化圏の人間としては、テンションが上がるのだが…。とりあえず気分をアゲるためにまた、昨日に引き続きアニソンを垂れ流す限界オタクと化しながら走る事数時間、ちょうど尿意を催したところでゴヌの街の入る。ちょっと一息入れたくもあり、デカイ教会を眺めながらコーヒーを飲むというのもオツなものだろう…ということで『Le Central Bar』というお店に入る。
店主「お、日本からの参加かい?ようこそフランスへ!」
私「そうだよ、ありがとう!先にトイレ借りてもいいかい?」
店主「もちろんだとも!」
というやりとりを英語で行い(思ったより英語ができるフランス人は多い印象)、ありがたく使わせていただく。
私「トイレ貸してくれてありがとう!コーヒー一杯もらえますか?お値段はいくら?」
店主「お金は結構。俺の奢りだ!残りも頑張ってくれ!」
いやいや、悪いよ…と思ってむしろ支払いたいくらいであったが、私の語学力ではそれを伝える術は無いのでありがたく頂戴することに。外のテラス席に出てボーっと教会や街並みを眺めながら飲み終える。…マジで美味ぇな、このエスプレッソ。精一杯の感謝を「セ・デリシュー。メルシー」と言葉に乗せて店を後にする。みんな、ゴヌの街の『Le Central Bar』をよろしくな!(ダイレクトマーケティング)
そうしてまたジリジリと気温が上がる中、1時間ほど走行しPC10のFOUGERESに12:35到着。ここでもいつも通りスタンプ・トイレ・給水の3点セットのタスクに加え、そろそろ日本食が恋しくなってきたため持参したアルファ米(赤飯)を食べる。水は15kmほど手前で入れてきていたため、あと10分ほどすればいい塩梅に出来上がっているだろう…。
トイレから戻り木陰で赤飯を食べていると、駐輪場の方でガッシャーンと派手な音がした。なんだなんだとそちら見やると、自転車をドミノ倒しにしてしまった人が他の参加者から何やら怒鳴られていた。これだけ参加者が多ければ起こっても仕方がない事故ではあるが、自分も気を付けよう。
【PC10:FOUGERES~PC11:VILLAINES-LA-JUHEL】
次のPCは90km先である。もはやすっかりお馴染みとなった灼熱地獄の中を走り続け、途中で暑さに辛抱堪らなくなりまた芝生の上で20分ほどゴロンと昼寝をしたりして(5人くらいの参加者が昼寝していたスポットだったので、流石に事故と間違われることはないだろうと判断した)、着実に距離を削っていく。…明らかに私有地というか、他人の家の庭で昼寝している人達の姿が目につくんだけど、家主に許可は取っているのだろうか?まぁ、取っているんだろう。そうじゃなかったら流石にいくら何でも非常識過ぎるし。
この辺りになるとハイタッチを求められたり声援をくださる方の数がかなり増えてきた印象を受ける(笑顔でメルシーメルシーと返すことに努める。カッコ悪いところは見せられない)。1001km地点を示す看板を見てようやく終盤戦に至ったことを実感。しかし身体にも異変が起こり始め、ここまでずっと食べ続けてきた補給食(スローバー・羊羹・カルパス)をとうとう受け付けなくなってしまった。固形物が食べられない…とかではなく、こいつらを食べる事を想像するだけで気持ち悪くなるというものである。おかげで私設エイドには本当に助けられた。あの局面で食べたバナナやメロンといった果物や、ポテチ、カヌレといったお菓子の美味しさは生涯忘れることは無いだろう…。暑さもあり出力も思ったより上げられず、予定より1時間遅れの18:40にVILLAINES-LA-JUHELに到着。ここまで来れば残り200km(=1ブルベ)ということもあり、なかなか活気に満ち溢れた雰囲気となっている。往路でこのPCのシャワーと仮眠所のクオリティの高さは理解したためここで一泊することも少し考えたが、15さんから「Mortagne-au-Percheで仮眠するため、はまいぬ君と向かってます。そして絶賛パンク修理中。待ってるね💗」という業務連絡が入る。まぁ、脚にはまだ余裕があるし、それじゃあ今日は予定通り80km先のMortagne-au-Percheまで進むことにするか…。駐輪場でたまたま隣に停めていた方が日本からの参加者で、「ここまできたらもうあと少し。事故でDNFというのもつまらないのでお互い気を付けて完走しましょう」と話しているうちに準備が完了。今夜の仮眠時間を少しでも稼ぐために出立した。
【PC11:VILLAINES-LA-JUHEL~PC12:Mortagne-au-Perche】
PCから出た直後、応援してくれる人の姿もかなり多く随分と励みになる。今日はまだ長丁場だし相変わらず灼熱だが、なんとか頑張ろう…と思った直後、参加者の事故現場を目撃する。幸い落車した本人は意識ははっきりしてそうではあったものの、救急車に運ばれているところを見ると先ほど交わした会話を思い出し、改めて気を引き締める。
そして8kmほど走った丘の上で、ふとある違和感が脳裏を掠める。あれ?そういえばブリの下に括り付けていた反射ベスト、さっきPC出た時目にしたっけ?とりあえず自転車を停めサドルバッグを確認すると…やはり嫌な予感というか違和感は当たっており、無い。おそらくさっきのPCで落としたか…ここでいったん次のPCに行くか戻るか考える。現在時刻は19:30。日没までの1時間30分以内で72km先のMortagne-au-Percheに到着するのは流石に無理。反射ベスト着用義務違反によるタイムペナルティは2時間。今からVILLAINES-LA-JUHELに戻ってもまぁ、流石に2時間ものロスにはならないだろう。というか、フランスの法律では夜間の反射ベスト未着用は普通に犯罪である。…と、ここまで考えたところでedge530を一時停止させ、踵を返す。反対側から次々とやってくる参加者達や応援の方々に怪訝な目を向けられながら、VILLAINES-LA-JUHELに戻ってきた。すぐさまスタッフを捕まえ、スマホの画面に表示させた「ジレ(反射ベストのこと)を無くした。ここに忘れものとして届いていないか?届いていない場合、近くにジレを買える店は無いか?」という文章を見せた。すぐに英語ができるスタッフが来て下さり「忘れものに届いていないか確認してくる。もし届いてなくても何とかするから食堂で待っててくれ」とご対応いただけることに。
待っている間は暇なのでTwitterを眺めていると、会社の都合で8/23中に帰りの飛行機に乗らざるを得なくなってしまい、70時間以内での完走必須というinfinite murachiさんが69時間30分で見事完走し、帰りの飛行機にも間に合った(=5日あればPBPに参加できることを証明した)という報告を目にする。やりやがった!!マジかよあの野郎ッやりやがったッ!!
流石にこのままボーっと待ってるのも難だし、せっかくなら補給しとくか…と思い直した。ということでチーズケーキとオランジーナを購入し席に戻ると同時に先ほどのスタッフも戻ってきたタイミングゥ…。「忘れ物として届いてはなかったけど、このXLサイズでよければ余ってるからあげるよ」と有難いお申し出が。もちろん他に選択肢も無いし、ありがたく承ることにする。「メルシー!メルシー!」と連呼するのと同時に「ありがとう。これで僕はまた…ちゃんと戦える」と心の中でキラ・ヤマトみたいなことを言い(受け取ったのはフリーダムガンダムではなくXLサイズの反射ベストだが)、駐輪場に戻る。
先ほどUターンした位置まで戻りedgeの一時停止を解除。ここまでのロスはおおよそ1時間30分ほど。トホホ…まぁ、でも今晩の睡眠時間が削られてしまったのは確かだけど、2時間のタイムペナルティを喰らうよりはマシなのでヨシ!とする。ポリスに御用となって罰金取られる可能性もあるし。
少しでも失った睡眠時間を取り戻すべく、そこそこに強度を上げて走ることにする。日も完全に落ちたしそろそろ涼しくなって…こない。いや、っていうか普通に蒸し暑いんですけどなんですかこれ?21時を過ぎてもサイコンの気温表示は28℃を示しており、路面状況を見るにどうやら通り雨が降ったらしく、湿度も体感で90…いや、間違いなく95%を越えている熱帯夜と化している。もうこれ完全に日本じゃん…と思いながらも闇夜の中を150Wくらいで頑張って踏んでいく。そしていい加減お尻が痛いぜ。
次のPCまで残り30km、(そういえばさっき、15さん達がこの道中でパンクしたって言ってたな…。こんな真っ暗な何も無いところでパンク修理とかしたくないなぁ…)と思った直後、後輪からの突き上げが強くなっている気が。えぇ…こんなフラグ回収要らないよ…と思いつつ自転車を停めて確認すると、はいバッチリしてましたパンクです。何なんだよチクショウ…ということで即座にパンク修理の準備に入る。
ヘルメットに念のためと思って装着していた、自転車用のライトをヘッドライトにするためのアタッチメントにVOLT800を取り付ける。ここまでヘッドライトの出番も特に無く、別に要らなかったかなと思っていたのだが、まさかこんな形で役立つことになるとは…。刺さっているであろうタイヤの異物を確認するも、特に見当たらない。三周くらい確認するものの、やはり見つからず。うーん、これめんどくさいパターンか?と思ってチューブの穴の箇所を確認するとリム側に空いている。あー、これリム打ちパンクですね。そういえばここまで来る途中の街の下り坂で一度、後輪がちょっとした穴に嵌ったのかガツンと大きめの衝撃がきたな…クソ、あの時か。まぁ、であれば後はもうシンプルにチューブを交換すればそれで解決だから、それはそれでラッキーか。リムの方も特に振れは発生していない。空気は…PCでフロアポンプ借りれば良いから、とりあえず走れる程度に雑に入れとけば良いか。
というわけで30分程度更に時間をロスし、パンク修理を終えて戦線に復帰する。これもう今晩寝れるんですかね…?と気が滅入りつつ走り出した僅か数km先の地点で、私設エイドが目に入る。こんな23時台と遅い時間でもやってくれることに心から感謝しつつ、小学校高学年くらいの子供にコーヒーを注いでもらって飲んでいると、フロアポンプが目に入る。「これ借りていい?」と親御さんに英語で聞いたら「もちろん!」と返ってきたのでありがたく使わせてもらうことに。フロアポンプの空気圧計を見ると4.5barしか入っていなかったので、6barまで入れて完全復旧。思ったより早いタイミングで万全の体制に戻れたことは本当にラッキーであった。
そんなこんなで深夜1:10にMortagne-au-Percheへ到着。な、長かったここまで…。
ということでスタンプを押してもらい、消費したチューブを購買で補充して(『チューブ』『インナーチューブ』『タイヤチューブ』では全然通じなかった。フランス語では何て呼ぶんだろう?)計画段階で利用する予定の無かったシャワーの受付へ向かう。理由は初日同様である。スタッフから「水しか出ないけど良いか?」と聞かれたが、まぁ、この熱帯夜なら大丈夫じゃないかな、むしろ望むところだと思いながら頭からおもむろにシャワーを浴びちべたいッ!
いや、なにこれチラーでも使ってんのか?と聞きたくなるくらいの冷水が出てくるんですけど…。隣のアメリカ人もジーザス!とか言って爆笑し始めたんですけど…。
歯を食いしばりながらさっさと全身を洗い終えて脱衣所で髭を剃っていると、AJジャージを着た人が入ってきたので少し会話をする。なんでもレーパンのパッド部分にジュースを溢してしまった結果、股ズレを起こしてしまいせめて衛生面だけでも改善させようとシャワーを浴び、PCで調達した新しいレーパンに履き替えるのだとのこと。それは想像するだけで辛い…無事に完走できることを祈る。
そうして仮眠所の受付を済ませ中に案内してもらう。空調はしっかり聞いているが、寝床が薄手のウレタンマットが敷かれているだけの非常に簡素なもので、隣の人との間隔も数cmというものである。寝返りを打ったら大事故になるのではなかろうか…。幸い、これまた私が案内されたのは周りに利用者がいない区画ではあったのだが。
時刻はAM2:30…ちょうど一時間後にアラームを設定しなら瞼を閉じる。計画ではここで3~4時間は寝る予定だったんだけどな、ちくしょう。
じかーい、じかい↓
http://gutti0822.livedoor.blog/archives/21748545.html
http://gutti0822.livedoor.blog/archives/21641032.html
【PC8:LOUDEAC~WP5:Quedillac~PC9:TINTENIAC】
「イッツタ~イム」
眼前にお年を召されたご婦人の顔が広がっていた。なるほど、これがLOUDEAC名物ブルターニュおばちゃんのASMRか。時刻はAM4:00ちょうど、申告していた希望時刻きっかりである。いや~、なんてサービス精神旺盛なんだ、おかげで快適な目覚めだぜ。おはようございます。
気温は15℃程度で少し足元は冷えている感覚があり少し肌寒くはあったが、やはり思った通り眠れないほど致命的な冷え込みとはならなかったのは僥倖である。
よし、まずは歯を磨いてから朝ごはんがてら補給食を食べる、いつものルーチンに入るか…ということでナップザックの中を漁ると歯ブラシが見つからない。恐らく昨夜シャワールームに忘れたな…と思い、スタッフに忘れ物として届いてないか確認するも無いとのこと。シャワールームにお邪魔させてもらうもやはり発見できず。うーん、これ捨てられちゃいましたね…。仕方ない。道中のスーパーで調達するしかないか…と早々に見切りをつけ、人権を失った口に補給食を突っ込みながら準備を終える。ライトを充電が完了しているものに取り換え、ドロップバッグに不要なものをぶち込み再出発を図る。時刻は少し予定を押して4:40…ちょっと巻きのペースでいく必要はあるし口の中が気持ち悪くていきなりテンションが下がっているがまぁ、なんとかなるべ。
口の中の雑菌による不快感と目の前を塞ぐゾンビ走行集団と戦いながら(フラフラな状態で反対車線走るのは勘弁してくれ。っていうかDNFしてくれ…)、下り成分多めのアップダウンを越えていく。しっかり眠れたおかげで脚は調子よく回る。やはりLOUDEACで仮眠を入れて正解だった。左手も痺れと痛みは感じるがしっかり動く。特にレバー操作に支障は無さそうだ。というわけでグロス21km/h程を維持しながらまずはWP5のQuedillacに到着。念のためシークレットPCではないかを確認…うん、大丈夫だ。というわけで立ち寄らずにそのままTINTENIACに向かう。どうせ25kmと近いし特に尿意も無い。補給食も十分過ぎる量だ。
そうしてTINTENIACに向けて走っていると、後ろから来た西洋人から割と流暢な日本語で「あなた日本人ですか?」と声を掛けられる。「Yes,I am Japanese!」と返そうかとも一瞬考えたが、ここは敬意を表し日本語で「そうです。日本語お上手ですね」と返答する。なんでも
約20分後、先ほどの新幹線マンを追い抜いた辺りで霧が出てきた。何とも幻想的で実にヨーロッパらしい光景である。日ももうすぐ上がる時間帯であるが、これならライトはしばらく点けっぱなしの方が良いだろう。それにしてもいい加減歯を磨きたいぜ…と思った頃にPC9のTINTENIACに到着した。時刻は8:05。わーい、40分も貯金ができたよ!ということでまずはブルベカードに押印してもらいに行く。ついでにトイレで軽量化も済ませるか…と思ったが、便座の無いタイプしかなかったので一旦保留。
イライラのあまりブリにやつあたり
そしていよいよ口の中の不快感が限界突破しつつあったので、近くに開いているお店が無いかグーグル先生に調べてもらうと…PCを出た直度にスーパーUがあり、もう既に開いていることを確認。じゃあもうジュース買ったりなんだりといった休憩はこっちで取るべということで、すぐに移動を開始する。余談だが、この時駐輪場で落としたブリを拾ってもらった際、思わず「Sorry」と言ってしまったら「おいおい日本人、こういう時は"Sorry"じゃないだろ?(ウィンク)」という、テンプレのようなやり取りが発生した(「Thank you!」と言い直しておいた)。
まだ開店直後のためか、客は私以外に数人しかいない。とりあえずまずは軽量化だとお尻セレブを背中のポケットに入れてトイレに向かったのであるが、えぇ…何でここも便座が無いの…?(困惑)いや、確かに綺麗ではあるんだけど…。まぁ、でも仕方がない。ここで便座無しの洋式トイレを経験することで、新たな見識を得られるかもしれない。男は度胸!何でもためしてみるのさ。
自分の中での『絶対に使いたくないトイレランキング』のワースト1位が和式から便座無し洋式に更新された後(780km走ってからの空気椅子は拷問である)、旅行用の歯ブラシセット(分割式でめっちゃ便利そうだったので、予備も含めて2セット)とオランジーナを購入する。これにてようやく口内の人権を回復することに成功。60km先の次のPCであるFOUGERESの街を目指す。
【PC9:TINTENIAC~PC10:FOUGERES】
えっちらおっちらとまた無限アップダウンのコースに戻る。う~ん、しかしいい加減このどこまでも続く未開拓の大草原は飽きてきましたね…。街に入ると西洋建築が珍しい文化圏の人間としては、テンションが上がるのだが…。とりあえず気分をアゲるためにまた、昨日に引き続きアニソンを垂れ流す
店主「お、日本からの参加かい?ようこそフランスへ!」
私「そうだよ、ありがとう!先にトイレ借りてもいいかい?」
店主「もちろんだとも!」
というやりとりを英語で行い(思ったより英語ができるフランス人は多い印象)、ありがたく使わせていただく。
私「トイレ貸してくれてありがとう!コーヒー一杯もらえますか?お値段はいくら?」
店主「お金は結構。俺の奢りだ!残りも頑張ってくれ!」
いやいや、悪いよ…と思ってむしろ支払いたいくらいであったが、私の語学力ではそれを伝える術は無いのでありがたく頂戴することに。外のテラス席に出てボーっと教会や街並みを眺めながら飲み終える。…マジで美味ぇな、このエスプレッソ。精一杯の感謝を「セ・デリシュー。メルシー」と言葉に乗せて店を後にする。みんな、ゴヌの街の『Le Central Bar』をよろしくな!(ダイレクトマーケティング)
そうしてまたジリジリと気温が上がる中、1時間ほど走行しPC10のFOUGERESに12:35到着。ここでもいつも通りスタンプ・トイレ・給水の3点セットのタスクに加え、そろそろ日本食が恋しくなってきたため持参したアルファ米(赤飯)を食べる。水は15kmほど手前で入れてきていたため、あと10分ほどすればいい塩梅に出来上がっているだろう…。
トイレから戻り木陰で赤飯を食べていると、駐輪場の方でガッシャーンと派手な音がした。なんだなんだとそちら見やると、自転車をドミノ倒しにしてしまった人が他の参加者から何やら怒鳴られていた。これだけ参加者が多ければ起こっても仕方がない事故ではあるが、自分も気を付けよう。
【PC10:FOUGERES~PC11:VILLAINES-LA-JUHEL】
次のPCは90km先である。もはやすっかりお馴染みとなった灼熱地獄の中を走り続け、途中で暑さに辛抱堪らなくなりまた芝生の上で20分ほどゴロンと昼寝をしたりして(5人くらいの参加者が昼寝していたスポットだったので、流石に事故と間違われることはないだろうと判断した)、着実に距離を削っていく。…明らかに私有地というか、他人の家の庭で昼寝している人達の姿が目につくんだけど、家主に許可は取っているのだろうか?まぁ、取っているんだろう。そうじゃなかったら流石にいくら何でも非常識過ぎるし。
この辺りになるとハイタッチを求められたり声援をくださる方の数がかなり増えてきた印象を受ける(笑顔でメルシーメルシーと返すことに努める。カッコ悪いところは見せられない)。1001km地点を示す看板を見てようやく終盤戦に至ったことを実感。しかし身体にも異変が起こり始め、ここまでずっと食べ続けてきた補給食(スローバー・羊羹・カルパス)をとうとう受け付けなくなってしまった。固形物が食べられない…とかではなく、こいつらを食べる事を想像するだけで気持ち悪くなるというものである。おかげで私設エイドには本当に助けられた。あの局面で食べたバナナやメロンといった果物や、ポテチ、カヌレといったお菓子の美味しさは生涯忘れることは無いだろう…。暑さもあり出力も思ったより上げられず、予定より1時間遅れの18:40にVILLAINES-LA-JUHELに到着。ここまで来れば残り200km(=1ブルベ)ということもあり、なかなか活気に満ち溢れた雰囲気となっている。往路でこのPCのシャワーと仮眠所のクオリティの高さは理解したためここで一泊することも少し考えたが、15さんから「Mortagne-au-Percheで仮眠するため、はまいぬ君と向かってます。そして絶賛パンク修理中。待ってるね💗」という
【PC11:VILLAINES-LA-JUHEL~PC12:Mortagne-au-Perche】
PCから出た直後、応援してくれる人の姿もかなり多く随分と励みになる。今日はまだ長丁場だし相変わらず灼熱だが、なんとか頑張ろう…と思った直後、参加者の事故現場を目撃する。幸い落車した本人は意識ははっきりしてそうではあったものの、救急車に運ばれているところを見ると先ほど交わした会話を思い出し、改めて気を引き締める。
そして8kmほど走った丘の上で、ふとある違和感が脳裏を掠める。あれ?そういえばブリの下に括り付けていた反射ベスト、さっきPC出た時目にしたっけ?とりあえず自転車を停めサドルバッグを確認すると…やはり嫌な予感というか違和感は当たっており、無い。おそらくさっきのPCで落としたか…ここでいったん次のPCに行くか戻るか考える。現在時刻は19:30。日没までの1時間30分以内で72km先のMortagne-au-Percheに到着するのは流石に無理。反射ベスト着用義務違反によるタイムペナルティは2時間。今からVILLAINES-LA-JUHELに戻ってもまぁ、流石に2時間ものロスにはならないだろう。というか、フランスの法律では夜間の反射ベスト未着用は普通に犯罪である。…と、ここまで考えたところでedge530を一時停止させ、踵を返す。反対側から次々とやってくる参加者達や応援の方々に怪訝な目を向けられながら、VILLAINES-LA-JUHELに戻ってきた。すぐさまスタッフを捕まえ、スマホの画面に表示させた「ジレ(反射ベストのこと)を無くした。ここに忘れものとして届いていないか?届いていない場合、近くにジレを買える店は無いか?」という文章を見せた。すぐに英語ができるスタッフが来て下さり「忘れものに届いていないか確認してくる。もし届いてなくても何とかするから食堂で待っててくれ」とご対応いただけることに。
待っている間は暇なのでTwitterを眺めていると、会社の都合で8/23中に帰りの飛行機に乗らざるを得なくなってしまい、70時間以内での完走必須というinfinite murachiさんが69時間30分で見事完走し、帰りの飛行機にも間に合った(=5日あればPBPに参加できることを証明した)という報告を目にする。やりやがった!!マジかよあの野郎ッやりやがったッ!!
流石にこのままボーっと待ってるのも難だし、せっかくなら補給しとくか…と思い直した。ということでチーズケーキとオランジーナを購入し席に戻ると同時に先ほどのスタッフも戻ってきた
先ほどUターンした位置まで戻りedgeの一時停止を解除。ここまでのロスはおおよそ1時間30分ほど。トホホ…まぁ、でも今晩の睡眠時間が削られてしまったのは確かだけど、2時間のタイムペナルティを喰らうよりはマシなのでヨシ!とする。ポリスに御用となって罰金取られる可能性もあるし。
少しでも失った睡眠時間を取り戻すべく、そこそこに強度を上げて走ることにする。日も完全に落ちたしそろそろ涼しくなって…こない。いや、っていうか普通に蒸し暑いんですけどなんですかこれ?21時を過ぎてもサイコンの気温表示は28℃を示しており、路面状況を見るにどうやら通り雨が降ったらしく、湿度も体感で90…いや、間違いなく95%を越えている熱帯夜と化している。もうこれ完全に日本じゃん…と思いながらも闇夜の中を150Wくらいで頑張って踏んでいく。そしていい加減お尻が痛いぜ。
次のPCまで残り30km、(そういえばさっき、15さん達がこの道中でパンクしたって言ってたな…。こんな真っ暗な何も無いところでパンク修理とかしたくないなぁ…)と思った直後、後輪からの突き上げが強くなっている気が。えぇ…こんなフラグ回収要らないよ…と思いつつ自転車を停めて確認すると、はいバッチリしてましたパンクです。何なんだよチクショウ…ということで即座にパンク修理の準備に入る。
ヘルメットに念のためと思って装着していた、自転車用のライトをヘッドライトにするためのアタッチメントにVOLT800を取り付ける。ここまでヘッドライトの出番も特に無く、別に要らなかったかなと思っていたのだが、まさかこんな形で役立つことになるとは…。刺さっているであろうタイヤの異物を確認するも、特に見当たらない。三周くらい確認するものの、やはり見つからず。うーん、これめんどくさいパターンか?と思ってチューブの穴の箇所を確認するとリム側に空いている。あー、これリム打ちパンクですね。そういえばここまで来る途中の街の下り坂で一度、後輪がちょっとした穴に嵌ったのかガツンと大きめの衝撃がきたな…クソ、あの時か。まぁ、であれば後はもうシンプルにチューブを交換すればそれで解決だから、それはそれでラッキーか。リムの方も特に振れは発生していない。空気は…PCでフロアポンプ借りれば良いから、とりあえず走れる程度に雑に入れとけば良いか。
というわけで30分程度更に時間をロスし、パンク修理を終えて戦線に復帰する。これもう今晩寝れるんですかね…?と気が滅入りつつ走り出した僅か数km先の地点で、私設エイドが目に入る。こんな23時台と遅い時間でもやってくれることに心から感謝しつつ、小学校高学年くらいの子供にコーヒーを注いでもらって飲んでいると、フロアポンプが目に入る。「これ借りていい?」と親御さんに英語で聞いたら「もちろん!」と返ってきたのでありがたく使わせてもらうことに。フロアポンプの空気圧計を見ると4.5barしか入っていなかったので、6barまで入れて完全復旧。思ったより早いタイミングで万全の体制に戻れたことは本当にラッキーであった。
そんなこんなで深夜1:10にMortagne-au-Percheへ到着。な、長かったここまで…。
ということでスタンプを押してもらい、消費したチューブを購買で補充して(『チューブ』『インナーチューブ』『タイヤチューブ』では全然通じなかった。フランス語では何て呼ぶんだろう?)計画段階で利用する予定の無かったシャワーの受付へ向かう。理由は初日同様である。スタッフから「水しか出ないけど良いか?」と聞かれたが、まぁ、この熱帯夜なら大丈夫じゃないかな、むしろ望むところだと思いながら頭からおもむろにシャワーを浴びちべたいッ!
いや、なにこれチラーでも使ってんのか?と聞きたくなるくらいの冷水が出てくるんですけど…。隣のアメリカ人もジーザス!とか言って爆笑し始めたんですけど…。
歯を食いしばりながらさっさと全身を洗い終えて脱衣所で髭を剃っていると、AJジャージを着た人が入ってきたので少し会話をする。なんでもレーパンのパッド部分にジュースを溢してしまった結果、股ズレを起こしてしまいせめて衛生面だけでも改善させようとシャワーを浴び、PCで調達した新しいレーパンに履き替えるのだとのこと。それは想像するだけで辛い…無事に完走できることを祈る。
そうして仮眠所の受付を済ませ中に案内してもらう。空調はしっかり聞いているが、寝床が薄手のウレタンマットが敷かれているだけの非常に簡素なもので、隣の人との間隔も数cmというものである。寝返りを打ったら大事故になるのではなかろうか…。幸い、これまた私が案内されたのは周りに利用者がいない区画ではあったのだが。
時刻はAM2:30…ちょうど一時間後にアラームを設定しなら瞼を閉じる。計画ではここで3~4時間は寝る予定だったんだけどな、ちくしょう。
じかーい、じかい↓
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