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PBP2023レポート② : 凡脚週末ローディの戯言 (livedoor.blog)

【8/20(日)スタート当日】
 AM8:00起床。さぁ、今日はいよいよ人生最大の大舞台、PBPのスタート当日である。私のスタート時刻は19:00なので睡眠貯金を稼ぐためにも本来ならもっとギリギリまで寝ていた方が良いのであるが、午前中に済ませなければならない重要なタスクが残っているのである。そう、ドロップバッグの預け入れである。これは何かというと、日本の旅行代理店であるグッディスポーツが用意しているサービスであり、8000円を支払うことで435km地点&782km地点のPCに指定されているルデアックに、自前で用意した着替えや補給、その他予備品を詰め込んだバッグを運んでおいてくれるというものである(なお、前回は6000円でバッグ自体も料金に含まれていたようである。それもこれもみんな円安が悪い、多分)。不衛生な服装のままでは股ズレといった故障に繋がる可能性が飛躍的に高まる上、単純に気分もよろしくない。かと言ってまさか大学時代のキャンプツーリングよろしく何着も着替えを持って走るわけにもいかないし(そういうスタイルの人もそこそこ見かけたが、やはり登り区間のディスアドっぷりには苦労してそうだった)、何よりライトやバッテリーやタイヤ等の予備を入れておくことで、万が一の際のトラブルへの備えが用意できるという安心感は絶大である。そんなドロップバッグの預け入れ指定時刻はAM10:00。幸い、持ち込み場所も宿泊場所から近い場所を指定することができたのは僥倖だった。バッグの準備を終えtessyさんとその友人と私の三人で指定場所まで自転車で向かい、同じくバッグを預けにやってきていた15さん達や他のPBP出走者たちと少しだけお喋り。お互いの健闘を祈ってまた再度ギリギリの時間まで睡眠貯金を稼ぐために寝床に戻る。って言うかもう既に暑い。暑すぎる。これはもうずっと走行期間中は高温環境との戦いになりそうだな…と覚悟を決めつつ、ひとまず睡眠導入剤を飲んで11:30頃に無理矢理就寝した。

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 14:00、設定していたスマホのアラーム音と共に目が覚める。おおよそ3時間強は寝れたであろうか。とりあえず寝汗が凄いのでシャワーを浴びて人権を取り戻す。冷蔵庫の中を空にするためにも昼食がてら残っていた食べ物も全て消化する(チルドのサーモンハンバーグが思いの外美味かった。また是非食べたい)。そしてサイクルウェアに着替え、庭に出て自転車にバッグ類とブリを装着していく。上はサイクリング部時代のクラブジャージ。これはもう絶対にPBPを走る時が来たら着ようと思っていたものだ。その念願が叶い、このような場面でこのジャージに袖を通せること、それ自体が素直に嬉しい。…いや、しかしもうなんかいくら何でも暑すぎませんか?当たり前の話だが、午前中より気温は更にガツンと上昇しており、腕に巻いていたスマートウォッチ(GARMINのForeathlete745)には32℃と表示されている。これがもし日本国内の通常BRMであったなら、暑さに極端に弱いこともあり確実にDNSしている環境である。しかし勿論PBPという大舞台、そしておそらくこれが人生最初で最後の参加になるであろう立場としては不退転の覚悟で臨んでいる次第である。そんな選択肢なぞ存在しない。全ての準備を完了し、サマーバケーションで便が減っているところに更にストライキが重なり、大幅な減便となっているらしいN線に乗ってランブイエに向かうため、La Verriere駅に向かう。ここで私より1時間後の20:00出走組であるtessyさんと、スタート前の最後の挨拶。お互いの健闘を祈り合い、宿を後にした。
 La Verriere駅で切符を買い、自転車と共に駅構内へ。前日に切符の買い方は覚えたのでスムーズに入場することができた。ホームには既に10人ほどPBP参加者が木陰のあるところで電車を待っている。その間他国の参加者からブリを「このfishは実にcuteだね!」と英語で褒められたので、「サンキュー!ディスイズ"ブリ"!」と下手くそな英語で返しておいた。
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 Twitterを眺めているとばるさん・さめはるさん夫妻も電車に乗ったということで、(ははーん、これさては同じ電車に乗ることになるな?)と思ったのだが…ホームに電車が到着したので目の前に停まったドアから乗り込むと、まさにそのお二人が目の前に。何のフラグ回収だよ…同じ日本からの参加者、それも見知った人でかつPBP参加歴も豊富なベテランが同じ車両ということで、かなり心強かったというのが正直なところ(ちなみにさめはるさんは同車両に乗り合わせていたインドからの参加者に、「We are biryani lovers!」と謎のコミュニケーションを図っていた)。「この暑さマジやばいっすね」みたいな話をしつつ、あっという間にランブイエに到着。駅前に設置されているフロアポンプで空気圧の調整を試みたり(破損していたのでそれは叶わなかった)、個人商店で水分補給をして(50€札で会計しようとしたら文句を言われた。ちなみに100€札だと完全に会計を拒否されることが殆どらしい。だったらなくしちまえよ、そんなもん)準備を整えたのち、受付会場まで三人で向かう。
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 そしてスタート会場に17時頃に到着。私の属するM組の集合時間は確か18時。まぁ、1時間もあるし余裕だろ、と思いつつ申し込んでおいたウェルカムミールスを食べるために食堂へ行くと、めっちゃ並んでますやん…「あれ?これひょっとして思ったより余裕無いやつ?」と内心少し焦る。というのも、実は完走後速やかに人権を回復させるために、荷物預かりサービスを利用してシャワーを浴びた後の着替えを用意しておこうと目論んでいたのである。まぁ、しかし焦ったところで仕方がない。とりあえずスタートしていく人達を見送りながら大人しく列に並ぶことにする。リカンベントやベロモービルといった『スペシャルバイク』枠であるところのF組がちょうど目の前でスタートしていったのだが、気のせいかなサドルの無い自転車(エリプティゴという車種である)がいたような…?っていうか、こんな高温環境だとベロモービルはツライだろうな…やはり日中の走行は避けて夜間走行がメインになるのだろうか?等と考えていると、割とすぐに順番が回ってきた。食券を入り口のスタッフに渡して食堂へ入場し、提供された食事(前評判とは違い結構美味しかった。特にデザート枠のエクレアは絶品だった)をさっさと掻き込んで荷物預かりサービスの受付を探す。しかし場所がどこなのかさっぱりわからない…。2~3km自転車に乗って彷徨ったが見つからず、翻訳アプリを使用してスタッフに尋ねたところ「受付場所は昨日スタート受付をした中庭だが、M組ならもう時間が無いから諦めろ」と言われてしまう。そう、スタート受付から中庭までは距離にして数km離れた場所なのである。そしてこの時点で既に18時は過ぎてしまっていた。もし来年以降、同じように着替えを預けておいたり「走行中の日程までホテルの部屋を抑えておくのはお金が勿体ないから、その間荷物を預かっててもらおう」と考えている人は、かなり早い時間に移動してくるかそもそもの利用自体を再考することを強くオススメする。仕方ない、この着替え入りのPBPナップザックはブリとともにサドルバッグに縛り付けてルデアックまで運ぶしかなかろう。いきなり出鼻を挫かれそうな勢いだが、まぁ、この程度のトラブルなら大勢に影響は無いだろう。
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 そうこうしているうちにM組の車検場への誘導が開始される。移動する間、『琥珀』の銘が刻まれたフレームに『バイシクルわたなべ』と書かれたサイクルジャージの人が視界に入る…。これはまさか…。

僕「あの~、ひょっとして静岡にあるバイシクルわたなべのチームの方でしょうか?」
てんちょーさん「はい!今は静岡市の店舗の店長をさせてもらってます!」

なんと!実は私が人生で最初に購入したスポーツ自転車のお店がまさにそのバイシクルわたなべであり、学生時代も物凄くお世話になったショップなのである。その店長と、今こうして遠い異国の地のPBPという大舞台、それも同じウェーブで出会うという奇跡に巡り合えたのだ。Twitterでは以前から相互フォローだったけど
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そんな神様の運命の悪戯に感謝しつつ雑談もそこそこに車検が完了する。ブルベカードにスタンプを押してもらい、いよいよスタート待機列へ。…なのだが、ここにきて尿意を覚えたためいったん列を離脱しトイレへ。120km先のWP1まで公衆トイレを含めてトイレを借りれそうな場所の類が皆無であることは確認済であったため、ここでしっかり済ませておく。そしていやに喉というか、口の中が乾く…。始まってすらないのにもう既にボトルを1本空けてしまったため、そのまま給水ポイントにも立ち寄り水を汲んでおく。(今にして思えば、この時にはもう既に脱水症状の兆候はあったのだ)
 そして木陰の無い直射日光をもろに浴びることになるスタート待機列まで戻る。これから始まる1200kmもの長い旅路に年甲斐もなく不安と興奮を抱きながら(実は1000km以上のブルベ自体、出走するのはこれが初めてである)、静かに待機する。いや、しかし本当に暑いな。暑すぎる。フランスは寒いと聞いていたのにどうなってるんだ一体…。DJが場を盛り上げてくれており、さながら本当にお祭り騒ぎの様相を呈している。AACRとかも何となくこんな感じだったかな。
そしてカウントダウンが始まった。

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「3、2、1…スタート!」

さぁ、ヒーローの…じゃなかった、ブルベの時間です。


じかーい、じかい
PBP2023レポート④ : 凡脚週末ローディの戯言 (livedoor.blog)